久々に書く種感想。つまり、書きたい内容がそれなりにあると言うことである。


ガンダムSEEDデスティニー23話 戦火の陰



<あらすじ>
キラのフリーダムとアークエンジェルが三つ巴の戦闘を強制的に終わらせる。


<みどころ>

先週のラストでミネルバの主砲をぶっ壊し颯爽と登場したキラ。続いてアークエンジェルからはカガリが飛び出し、戦闘の停止を呼びかける。

が、地球連合による圧力の下オーブのユウナは攻撃を再開、カガリの悲痛な叫びをよそに戦闘が始まってしまう。強引に全兵器を破壊するキラ。犠牲者が出ないで終わるはずが。。。。

 

この話を見ていて何度も思うことがある。いわゆる『究極の戦争』ってヤツ。最初から誰をどれだけ殺して何を壊すか、首脳レベルで決まっている破壊調整のことだ。つまり、この話の中で起こるすべての事件を筋書きとして知っている人間たちがいると言うことである。

 

たとえば、冒頭のアークエンジェルの着水。大乱戦のさなかだったのになぜか、戦場にいたすべてのオーブ軍と地球連合軍の動きが停止している。

フリーダムはミネルバのタンホイザーを撃ち抜いている訳で、普通に見れば「連合軍への援護」に他ならない。ミネルバを撃沈しザフト軍を粉砕するチャンスのはずなのである。が、ユウナはともかく(後述する)、ネオまでがこの“好機”にまったく対処していない。

 

同時に、いくつか疑問が残る。旧世代の兵器のはずのフリーダムの接近を、なぜ最新鋭艦のミネルバが察知できなかったのか?

たとえば、同じ動きをネオのウィンダムがしていたら、ミネルバは沈められていてもおかしくないはずなのである。

また、同じムラサメなのに、バルトフェルド機だけどうして戦闘力が隔絶しているのか。

アークエンジェルはあれだけの人数で、どうして整備できたのか?

フリーダムはなぜ、あのように修理ができたのか?

なぜ、カガリ強奪があんなに簡単にできたのか?

そして、アークエンジェルのメンバーはなぜ、オーブの軍服を着ているのか(アークエンジェルが万が一撃沈された場合オーブ勢力とみなされる)。

 

一つの答えがある。

ユウナとラクスとの間に、密接な連携があるということだ。

少数とはいえオーブ内では隠然たる影響力を持っているアスハ派はしかし、全世界を相手にオーブ独立の理念を守り抜けるほどには強くない。

地球連合の外圧と国民の利益がモロに矛盾するこの状況で、最小限の犠牲で精神と国民の自由を守る必要がある。

ここで、ユウナという憎まれ役を作るのは悪い手ではない。

 

現実路線のユウナ政権に対する不満のガス抜きとして、カガリという希望を持たせる。伝説の船とともにある正義の皇女(しかも美少女)とは象徴として非常に強力なのではあるまいか。

 

この結果、国を割ることなく、オーブがユウナ派の下にまとまることになる。「色々考えてらっしゃるカガリ様がこの現状に対し行動する」まで国民は余計なことをしないで待っていればいいのだから。(ユウナの下にもガス抜きとしてトダカという老練な副官がいることに注目)

 

ここに、ユウナがラクス一派と水面下で共闘姿勢をとる理由が存在する。

無能でどうしようもない、地球政府に対する“顔”としてのユウナと、オーブの実質的な意志の体現者としてのアークエンジェル。

国にふたつの勢力が作り出されるこの状況こそが、オーブにとって望ましいことであるのだ。

 

つまり、オーブを中心に発生した一連の事件はきわめて計画的なものだったと考えることができる。

軍の再建の予算は集中的にアークエンジェル隊に回され(だからフリーダムが最新鋭機以上の戦闘力を持つほどに強化できた)、カガリ強奪から国外逃亡まですべての便宜をユウナが供与する。

彼らがオーブの制服をまとっているのは、オーブの意志の実行者であるからに他ならない。

 

この芝居にはしかし、いくつかのキーが存在する。

一つは、カガリ自身が芝居をしてはいけないと言うこと。カガリの幼稚すぎる平和願望、つまりは純粋さを象徴として昇華するためだ。

一つは、カガリを演出するスタッフがカガリの周りに必要であること。この場合、前大戦における“地球のフィクサー”とも言うべきラクスが適任である。

最後に、カガリを際立たせるために“不純でどうしようもない”敵役が必要であること。

 

現状では、ユウナは見事にその役割を演じきっている。

ユウナのヒステリックな口調、お粗末極まる取り乱し方は、“カガリに対して手を出していない”“アークエンジェルの侵入を許した防空責任者の責任を問うていない”“ミネルバを沈めろとは命令していない”“フリーダムへの攻撃命令そのものでは犠牲者がほとんど出ていない”という彼の本質をほぼ完全に隠してくれている。

 

前大戦でのフリーダム&アークエンジェルの活躍は半ば伝説になっている。(オーブ本国の守備隊はなればこそ、フリーダムへの攻撃を躊躇したわけだ)。花嫁強奪まで一貫してその姿勢を貫いているフリーダムに攻撃を仕掛けても大して危険ではないことなど、国家元首としてのユウナは当然見越してしかるべきことである。

 

今回の戦闘でオーブ軍は甚大な打撃を受ける。“テロリストにいいようにやられた情けない軍隊”として。

地球連合から手を引く口実を得たわけである。人的損害をほとんど出さずに。

 

では、地球連合のネオ、ザフト、そしてシンはなぜアークエンジェルの跳梁を許したのか?

いくつかの要因がある。

ひとつは、地球連合内でのブルーコスモス(ネコ男一派)とMA推進派の確執。

これは、ザムザザーを運用した艦隊やウィンダムを配備されているすべての部隊の異様なまでの弱さと、彼らが共通してMAを重視する司令官の下に配属されていたという事実に関連する。地球連合内に“優先して無能な人材を大量に排除しよう”という動きが見て取れる。

この場合、ネオがどちらになるのかはあいまいであり(どちらともつながっている節がある)、現時点では明確な判断ができない。

 

これに関連して、この戦争の究極目的であろう“人類の間引き”というものが挙げられる。

(この目標の下では各勢力は見事に協力しており、明確な合意がすでに成立しているものと思われる)

 

特定の人物に配備されたウィンダム、ザク、ムラサメと一般機の性能の隔絶はこのためである。いまだに戦争へのトラウマが残るこの世界。水面下での合意により世界はすでに統合に向かっているわけだが、国民感情の安定のため、各国には高性能のMSを大量配備しなければいけないという需要があった。世間に国防は万全とアピールするわけである。

 

が、その真の目的は主戦派の排除である。彼らをエリートとして持ち上げたうえでカタログスペックよりはるかに低性能な“新鋭機”を回す。

これで間引きがより効率的になるわけである。

してみると、セカンド・ステージ計画というものは間引きと軍縮を両立し、ひいては軍需産業そのものを段階的に縮小するためのきわめて遠大な計画であったといわねばならない。人類は平和への確かな一歩を踏み出したのだ。

 

最後に、シン・アスカという存在が挙げられる。

人類の英知の結晶として人類を導くはずだった究極存在、キラ・ヤマトはラクスの忠実な番犬へと堕してしまった。

三勢力の意志(希望)を体現したものとしてアークエンジェル派が存在するのであるが、彼らは現在のところテロリストである。

また、覇者としての資質を持つラクス・クラインの真意が明らかでない以上、“残りの世界”の住人たちがラクスの理性に依存するのも危険な行為である。

そのための対抗馬として用意されたのが、戦争の痛みをなくすべく、苛酷な環境でのし上がったヒーロー、シン・アスカ、アスラン・ザラそしてミーア・キャンベルである。

この三人には特別な機体が与えられ、軍務を離れた行動の自由も保障されている(シンの場合は事後承諾の形だが)。

 

現在のところ彼らは対ラクス派の布石として使用されており、キラの行動へのアスランとシンの対応を見てもその目的は半ば達成されている。

しかし、今後はどうなるのであろうか。シンを次世代のヒーローとするのが思惑なのか、あるいは・・・・

 

ここまでで、いくつかのアクターが舞台に出揃ってきた。

ブルーコスモスのネコ男。

地球連合のMA推進論者。

ザフトのデュランダル議長。

デュランダルの私兵、ミーア、タリア、アスラン。

シン・アスカ。

旧時代の覇者、ラクス・クライン。

オーブのユウナ・ロマ・セイラム。

 

 

たとえば、今回の戦闘についてもアークエンジェルの役割は犠牲者の最小化のはずである。が、実際にはそうもなっていない。

人類間引き計画に対し、ラクスのスタンスがどうなるのか?

 

クライン=セイラム枢軸 対 デュランダル=ジブリール連合 の代理戦争になるのか、それとも?

世界情勢は予断を許さない。

 

最後に。本日Editedを見たのだが・・・・

あの位置じゃ温暖化の近未来だとオーブ水没してます。ていうか大きさ東京都くらいしかないんじゃないかアレ?

 

 

<けつろん>

すべては予定調和している。

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