要望が出たので本腰を入れて書いてみる種感想。見続けるの苦痛なんだけど今回は面白かった。
この話、サスペンスとしては面白いです。戦闘がなければ言うことがないんだけどなぁ。
ガンダムSEEDデスティニー24話 すれ違う視線
<あらすじ>
アスランとキラが話し合う。事態の内幕が見え始める・・?
<みどころ>
ミリアリア経由でキラたちとコンタクトを取ったアスラン。
双方の話を照会してみると浮かび上がるのはシャア@ザフトボスの不審な行動。
一方、研究施設らしきものの偵察に出たレイが突如倒れて・・・・謎が謎を呼んでおしまい。
いつものごとく盛り上げ方だけはうまい。
冒頭、前回のおさらい。これだけで丸々18分ぶんがわかる。
戦闘描写がほとんどなくても成立するのはきっと、この話の主眼が「戦争の愚かさを訴え抑止しようとする若き天才たちの政略劇」だからであろう。
(見よ!話し合いで解決しようとするアスランに比べ、シンがいかに子供に見えることか。決してセイバーが弱いわけではないのだ。)
さて、今回の話の前に前回のおさらい。
地球軍&オーブの連合艦隊とザフトが交戦、ザフト優位のまま大勢が決しようとした瞬間にアークエンジェルが乱入。
決定打を欠いたまま乱戦となり、ザフト側はハイネを失う。
つまり、ザフトはアークエンジェルのおかげでみすみす勝ちを逃がしたことになる。それも戦略的にかなり重要な。
だから、ミネルバクルーがアークエンジェルに対し「平和とか言いながら地球軍の肩もって邪魔しやがって!」と言うのは、正しい。
が、微妙に論点がずれてしまうのがSEED。
「あいつらが入ってこなければこんなに犠牲は出なかった・・・」にいつの間にか摩り替わっている。
ハイネを殺したのはステラである。回想でミネルバに砲撃をしかけたMSは連合軍のものである。
責任関係を整理すると、
正:
「このうそつきメ!」 →アークエンジェル
「いっぱい殺しやがってコノヤロー!」 →連合軍
「お前らのミスでいっぱい死んだんだぞ」 →フリーダムの接近を許したミネルバの索敵班(偵察チーム)
「弾幕薄いぞ!何やってるの!」 →敵を防ぎきれなかったミネルバ対空班
「しっかりしろよこのヘタクソ!」 →ハイネ
「何が新型だふざけんなコラ」 →グフのコクピットまわりにアンチビーム装甲を施さなかったザフトスタッフ
誤:
「お前らが介入してこなければ誰も死ななかったのに!」→アークエンジェル
つまり、誰も事態を正確に認識していない。この誤解は今回全編を通して描かれている。
「目の前に起こった事象ですら人は都合よく解釈し責任転嫁する」
そして
「世界を導くほどの天才たちですらこのワナに陥ってしまう」
という非常に高度な真理を伝えようというスタッフの熱いメッセージが読み取れる。
この作品の総監督に「戦争がなぜ起こるのか、みんなに考えてほしくて作った」との談話があるが、こうして実例を持ち出されると非常に説得力がある。うーん、深いなぁ。
前回の戦闘の被害の描写から始まる本編。
「アレがアークエンジェルとフリーダム?」と憤るシン。
“平和の象徴と聞いていたのに騙された”とでも言いたげな口ぶりである。
第一話でシンの家族が彼の目の前でフリーダムに殺されたことを思い起こせば違和感があるが、シンはザフトの軍隊で徹底的に教育されているわけである。そして、フリーダムはザフトを救ったザフト製の機体。
「人は自分の目で見たものよりも権威のあるものが言うことを信じやすい。だから真実は容易に捻じ曲げられる」という高度な真理が語られている。福田監督大盤振る舞い。
うーん、深いなぁ。
さらに、ただのテロリストのタワゴトでしかないはずのアークエンジェルのメッセージを皆が真剣に受け取り、混乱している。
以前にも些細な一言で落ち込む登場人物たちの描写があったが、世界政略に携わるべき者達はそれだけ繊細な神経を持っていなければいけないと言うことであろう。
うーん、深いなぁ。
今回、ここぞとばかりに偉そうなアーサーが目立った。
アネゴの前では萎縮しているくせに身分が下の者に対しては偉そうに振舞う。以前に「副長がフェイスになったわけじゃないのに何で喜んでいるのだろう」と揶揄されているシーンがあったが、このような組織の通弊とも言うべき小人を通じ、管理職の苦悩、そしてリーダーの資質と言うものを訴えかけている。
うーん、深いなぁ。
サービスシーンと言うべき風呂シーンでも、さらに含蓄に富んだメッセージがある。
ラクスの語りかけは一見ただのどうしようもないセクシーショットにしか見えないが、ラクスが何を成したかを鑑みれば、これは確固たる成功哲学に他ならない。
また、軍艦であるはずのアークエンジェルの風雅なたたずまいは、戦場で人が人であり続けるには心の余裕が必要だと言うことを伝えてくれている。
うーん、深いなぁ。
また、今回は更に“亀裂”と言うテーマがある。
アスランに対するキラの語り掛けには、
「ダサいMS・・・・」
「お前弱くなったよな(ていうか何もしてなかっただろ)」
「“バカは話してもわからない”ってお前まだわかってなかったの?」といった含みが見て取れる。
すなわち、さげすみである。これが友情の亀裂。
同様に、初めてラクスの下を離れて単独行動を取りたいと申し出たキラに対し、不信感を露わにするラクス。彼女の権力基盤はキラの鉄壁の忠誠だから、当然の反応である。これが忠誠の亀裂。
そして、自分の責任放棄が原因であるにも拘らず、恋人の責任についてなじるアスラン。これが愛情の亀裂。
苦労して築き上げた信頼がいかに脆いものか、実に判りやすく、身を以って語ってくれている。
うーん、深いなぁ。
しかも今回、核心とも言うべき軍隊の本質についても言及されている。
戦闘区画に一般人を立ち入らせてしまい、のみならず最新兵器の写真を撮影されてしまう正規軍のうかつさ。
虎の子のMSを無人でほっぽり出してどこかへ行ってしまう、エリートパイロットたちのうかつさ。
チームで援護をしないで単独行動に走るシン、レイ、アスラン、カガリ、キラ、ルナマリアと今回だけで実に6人もの実例で余すところなく描写されている。
どんなに傑出した個人がいても、協力しなければ組織として有効には機能しない、という、過去に多くの過ちを生み出した真理である。
こうした高度なものを5時半という時間に子供にもわかるように示してくれている。
ガンダムSEEDはガンダムの枠を越え、21世紀の旗手にふさわしい作品として大成しつつある。
うーん、深いなぁ。
最後に真相を知ったルナマリアが誰かに射殺でもされていたらサスペンスとしても面白かったのだが、それはやはり趣旨に反するのであろう。
彼女はいわば、視聴者の代理と言ってよい立場にある。彼女の今後の行動は要注目である。
混迷の時代に、我々はどう生きればよいのか?
その道標として演出されているのがルナマリアなのだから。
うん、すっごく深いなぁ。
<けつろん>
ガンダムSEEDは深いんだってば!哲学なんですッってば!