ビデオを見た。2時間を覚悟していたが実際には4時間近くかかってしまった。
11月の半ばから覚悟していたものの、自分がほしかったのはこんな未来かと一瞬非常にむなしくなる。


※前回のレビューで『年末スペシャルは49話、50話の焼き直し』として記述しましたが実際は49話終了直後から始まっていました。失礼いたしました。あわせて関係箇所を修正しています。


ガンダムSEEDデスティニー 年末スペシャル



SPECIAL PLUS

<目次>

ザフトは弱かったのか?
レクイエム戦の概要
ザフトの敗因
決戦の分岐点
レイ、心の向こうに
気になったセリフ
小ネタ
SPECIAL PLUS


<本文>
今回ビデオを見返すに当たり、いくつか注意した点がある。

1:ザフト兵は本当に弱かったのか?
2:戦闘状況はどう推移したのか?
3:問答セリフの書き出し

全部やっていたから4時間もかかった。この結果、見えてきたものがいくつかある。



ザフトは弱かったのか?

断言できる。マジでしゃれにならないくらい弱い
一般兵同士の戦闘でも損害比は1:4〜5になっている(乱戦での撃破はザコ同士での競り合いと判断)。もちろん4倍やられているほうがザフトである。同数の激突はお話にならず、小隊(3機)中隊(10〜15機)レベルではザフトだけが一方的にやられている。ムラサメの損害を見る限り、チームから孤立した機体に砲火を集中、という形でしかザフトはMSを撃破できていない。
また、前作ではジンが普通に連合の艦隊を落としていたが、メサイヤ戦のザクは直衛機のいない艦艇ですら満足に落とせず、逆に対空砲火に落とされている。

敗因も明確で、練度の絶望的な低さである。
まず、多くのケースでザフト機は攻撃に対応できていない。回避するでもなく防御するでもない。恐らくは撃破されるまで攻撃されたことにも気づいていない。オーブ軍・ドムが移動と攻撃を同時に行えるのに対し、ザフトは移動前にあらかじめ見当をつけていた目標への攻撃しかできていない。つまり、突発的に遭遇しての交戦では一挙動以上遅れるザフトが一方的にやられることになる。また、もし反応が間に合っても武器の選択を間違えてやられるケースが何度かあった。射撃距離なのに格闘武器で対応しようとしているのだ。
戦闘機での戦闘ならまだしも、MSという兵器の性質を考えれば致命的ではないか。

操作ですでにお話以前なのだが、問題は状況把握にもある。ドム隊がルナの随伴機を落とした際にはドムの進入方向とザクの射撃方向には90度以上の開きがあった。つまり、実際にMSを使った戦闘訓練が足りていないだけではなく、宇宙での景色の見方、ないしは方向感覚のつかみ方がそもそも教えられていないのではないか?

加えて、チームプレイの問題がある。最初の攻撃をどうにか耐えたザフト機がすぐ次の攻撃で落とされているケースがかなりあるのだ。一方、ザフトは一斉射撃しかしておらず、『ガードを飛ばされた機体に止めを刺す』といったチーム戦が全くできていない。

この結果、対MS戦だけでなく対艦攻撃においても支障が出る。そもそも相当の至近距離まで接近しないと攻撃そのものが行えていないうえ、ポジション取りをしてから攻撃動作にはいるまでのスキに撃墜されていることがほとんどである。わざわざ主砲の射線上に飛び込んで落とされるという例すら存在する。

ザフトではMSの動かし方と武器の撃ち方だけを教えてどんどん兵を前線に送っていたのではないか?確かに『弱兵でも精鋭として遇することで精鋭に育つ』(蒼天航路)のかもしれないし、そうした人材でも簡単に扱える汎用兵器こそ、セカンドステージの設計思想だったのかもしれない。
が、メサイヤ決戦を見ている限りではどうにも育成の時間が足りなかったようである。



レクイエム戦の概要

脚本のレジュメみたいになってしまうため、詳細は別項を立てて述べてみたいと思う。ポイントは議長は自軍の弱さをある程度理解しており(さすがにあそこまで惨敗するとは思っていなかったようだが)、レクイエム発射を最優先としていることである。足止めとしてのシンレイ・ミネルバ。主力軍は防衛とあわよくばAA隊の撃沈、と任務が割り振られ、純粋な攻撃の駒はレクイエムとジェネシスのみ。

一方、ラクス軍にとっても目的は議長の殺害ないしは拘束ではなく、プラント本国への爆撃でもない。あくまでレクイエムの破壊である。敗北条件は時間切れ、つまりレクイエムの発射だ。このため、キラの指示でも見られるようにすべての駒が攻撃だけを行っている。

ザフトのぶ厚い盾がラクスの鋭い矛に一定時間耐え抜けるか?決戦の焦点はこの点に絞られていたといってよい。

結果は本編でご存知の通り。実際に乱戦していたのはABパート(前半30分)までで、機動戦力が機能しなくなったことで議長はジェネシスの発射を余儀なくされている。また、Aパートに比べてBパートではエターナルがメサイヤに接近しており、乱戦とはいえラクス側が徐々に押しながらの乱戦であったことがわかる。Cパート以降でもかなりの戦力が残っていたようだが、ほとんど戦闘をしていない。そもそも議長がこの時点で投げてしまっている。てか議長の欠点の一つはあきらめの早さだよな。



ザフトの敗因

いうまでもなく、キララクにたてついたことシャアの軍隊だからである。

とはいえ、現実レベルで考えるなら一つは上述の練度の問題であり、これは訓練時間の絶対的な不足が原因である。議長の予想より決戦が早まったことに起因するのだが、本編での行動を見ている限りでは議長があの大規模な軍隊を最後まで使い続ける意図があったのかは疑問である。予備役クラスまで投入したからあの結果になった、とも言えなくはないのだ。

同様に、MSの絶対数の不足がある。確かに最終決戦の時点で圧倒的な兵力を持っていたのはザフトである。しかし、議長の『物量で押し切る』戦法をラクス相手にやるには不足だった。この結果エターナル隊のみならずオーブ艦隊までがレクイエムに到達できている。体感で2倍くらいの戦力の準備が必要であったように思える。

そもそも人口が少ないから兵器の質で戦おうとしたのがザフトのはずである。物量で押すこと自体に無理があったのではないか。
・・・・なんてことを言ってはいけない。話が終わってしまう。てか最終回だしいいか。

とはいえ、物量の中に決定力としての精鋭を置くという用兵思想はスポーツやビジネスも含めて戦いの基本であるし、ラクス軍を見ても時代の趨勢に反したものでない。議長の戦力編成がラクス・オーブ軍の劣化コピーだからそもそも仕方がないのだが、問題は精鋭部隊を数量比ではなく絶対量でラクス軍と同じにしてしまったことにもあるのではないか。もし議長がザフトの国力をフルに使い、ミネルバ隊のような精鋭軍を充実させていたらどうだったのだろう。

こうしてみるとグラスゴー隊の損失が返す返すも惜しまれる。『天空のキラ』はただの顔見せではなく、3つしかないザフトの貴重な精鋭軍が孤立したまま壊滅させられた、きわめて重要な戦闘だったのではないか。そうは描かれていなかったが。


では、議長に勝ち目がなかったか?と言えば決してそんなことはない。
レクイエムが落ちたのはアスランとネオがノーマークになってしまったためである。その二人にしても間に合ったのは発射ぎりぎり。勝つ目はあったのだ。ジェネシスにしたところで、味方主力とうまく連携していればラクス艦隊のかなりを葬れたのではないか。

今回見返して意外な敗因が見えてきた。ある人物の行動が決戦全体の9割までを規定している。
では、そのキーキャラとは誰か?クイズにしてみる。

あわせて、以下の問題提起をしてみる。
議長がミネルバ隊で試した精鋭軍の増強は有効だったのか?
デスティニー・プランはそもそもマトモに機能しうるのか?



・決戦の分岐点

これまで、議長の敗因は『キラの資質を見抜けなかったこと』と『自軍戦力への認識の不足』だと思っていた。たしかに戦略レベルでの敗因としてこの二つはあまりにも大きい。が、最終決戦に限定すればこれらの点を勘案しても議長の作戦で十分勝てた。敗因は実は別の点にあったのだ。

ここで、先ほどの質問の答えである。決戦を左右したキーキャラとは誰か?






準備がよろしい方はそのまま下へどうぞ。







レイである。
戦局全体を左右する重大な命令違反を犯しているのだ。

スペシャル版開始直前の状況をおさらいしてみよう。ザフト軍の目的は『物量でラクス隊を疲弊させて時間を稼ぎ、レクイエムを撃つ』ことである。エターナルの撃破は努力目標であって必須の目標ではない。ましてやアスキラの撃破は邪魔者の排除以上の意味を持たない。
そのためにミネルバ隊には足止めを命じ(49話)、レイにも今回で「守りきれ」との指示をわざわざ出している。

が、レイは「キラは俺が討つ。シンはアスランを討て。」と命令している。
『戦え』ではない。『撃破しろ』なのだ。ザフト軍の目的にも合致しないし、議長はもちろんこんなことは指示していない。

結果は深刻である。バラバラに一騎打ちを挑んだため、アスキラは余裕を持ってシンレイを各個撃破できている。かなり早い時点でフリーになったアスキラを止めうる戦力はもはや存在せず、レクイエムの発射は間一髪で阻止され、アスキラはその足で無補給のまま議長の戦闘力であるメサイヤとミネルバの撃破も果たしている。
仮に『アスキラを落としておくことが有利』とレイが判断した結果だとしても、二人がかりで一人ずつを討てた絶好の機会をみすみす逃しているのだ。

この事態は議長にとって意外だったようである。「レイも討たれた?」と驚いており、シンレイに対する一連の態度から見ても、レイには忠誠度だけでなく能力的にもかなりの信頼を置いていたと思われる。(親衛隊長とでも言うべきか?)

私的にはこのレイの判断ミス(?)が議長敗北の決定的要因に感じた。残りの1割はルナである。感情のままにしかけたアスランへの無謀な一騎打ちの結果数少ない打撃力であるインパルスが失われている。ルナなのであまり期待はできないが、アカツキの時間を奪うとかエターナルにちょっかいをかけるくらいはできたのではないか。てかアカツキってそもそもなんで苦戦してたんだろう。



・レイ、心の向こうに

どこかできいたようなタイトルなのはともかく、議長の計画全体を通じてレイはキーキャラになる。なぜなら議長に最も近く、絶対の信頼を置かれていたであろう人物がレイであり、彼自身盲目的ともいえる忠誠を誓う様子も劇中で描かれている。デスティニープランの最良のサンプルとして想定されるのも恐らくレイである。
今回のスペシャルでも、死んだラウに代わってクルーゼという役目を議長に与えられたように描かれている。レイとキラの対決では、『クルーゼとしての運命』は密接に関わってくる。

だが、実際にそうなのだろうか?

というのも、肝心の議長にとって『レイ』と『ラウのクルーゼ』が明らかに別の存在であり、実際のレイに対する扱いにもそれが現れているのだ。
回想に登場するラウは議長にとって友というべき立場である。少なくとも対等に根源的な会話ができる存在である。一方のレイだが、忠実な部下のように扱われているように見えてならない。もしレイが議長の言葉通りにラウたりうるなら、議長は回想のラウではなく現実のレイを相手に対等の問答ができるはずなのだ。が、議長が実際に行ったのは決定事項の伝達でしかない。

この傾向は最終決戦でも同じである。議長がレイに求めているのは“忠実なレイ”の役目であって“対等なラウ”の役目ではない。少なくとも語る相手としてのラウと戦士ラウが別物になっている。そして、『レイとラウが違うこと』を認識していないからこそ、議長は決戦で敗れている。(レイが議長の想定通りに行動していれば、シンレイはアスキラに対し撃破よりも邪魔を優先したはずだ。)

議長からの通信の直後にレイが真逆の行動をとったという事実こそ、議長射殺に至る伏線なのではないか。

つまり、キラの言葉はレイに新しい概念を植えつけたわけではなく、今まで気づかなかった『ギルは自分を実際にはレイとして扱っているのに、口ではラウであれと命令してくる』という矛盾を明らかにするキッカケとして作用したのではないか。レイと議長の関係を考えれば、瞬間的には恋人の浮気を知った以上のショックがあってもおかしくない。

この矛盾への気付きが、議長自身に『キラと議長、どちらの示す未来が望ましいか?』と直接的に問われることにより、あの結果になったのではないか。劇中でキラの『覚悟はある』発言に明らかに影響されており、ロゴス批判以降のレイの言動を考えるなら、レイが議長に従っていたのは『未来の担い手』としての能力への信頼という側面も無視できない。

こうしてみると、議長の計画は議長自身の不徹底、およびそれに対する無自覚というしょーもない理由で一番最初から破綻している。したがって精鋭軍をいくら増強をしたところでジュール隊の二の舞になるかグラスゴー隊のように限定的な運用しかできないのではあるまいか。ミネルバ隊は成功した部類に入るが、仕事より感情を優先するという致命的な弱点がまったく克服されていない。
つまるところ議長の人間性への信用がほとんどないことが原因なのだが、彼の問題点は『認識の不足』と『大変誤解されやすいおおげさな口調』であって『不誠実』ではない。ウソツキに見られやすい人はとかく不幸なのではなかろうか。

議長はレイに撃たれたと知り、「そうか・・」と悟ったような顔になる。レイひとりすら把握できていなかったことに納得したのか、あるいは先天的なものに後天的な関係では勝てないと悟ったのか、あるいは彼自身の上記の欠点に気付いたのか。



・気になったセリフ

日本語訳してみる。

ラクス=クライン
『この船よりもオーブです。オーブはプラントに対する最後の砦です。失えば世界は飲み込まれます。
絶対に守らなくてはなりません。私たちはそのためにここにいるのです。 だから行ってください。アスラン、ラミアス艦長。さ、早く。』(ラクス)
※太字は特に語気が強かった部分。
オーブが『失われれば』まずいもの、なのではなく『失えば』まずい、つまりラクスのものであることが共通の認識になっている、ともとれる文言である。ラクス軍閥の基盤がオーブということか。アカツキの戦闘力を考えれば、現在展開している程度の戦力は簡単に再供給できるのがオーブなのかもしれない。


ギルバート=デュランダル(&キラ=ヤマト)
『君がここへくるとは、正直思っていなかったよ。キラ=ヤマト君。』
(前回世界人類を放棄して引きこもってたヤツがよく出てこれたよな。どのツラ下げてだコラ?)

『なるほど?だがいいのかな?本当にそれで。』
(やべぇよ銃だしたよコイツ。やっぱりオレ殺されるのかよ(TT。てかちょっと待て。これだけは言わせろ。言わないと死んでも死にきれん。

・・・やめたまえ。せっかくここまできたのに。そんなことをしたら、世界はまた、もとの混迷の闇へと逆戻りだ。
(お前らがいない間オレが一人でどれだけ苦労をしたと思ってるんだ!!!それを全部無にする気かふざけんな!)

『私の言っていることは真実だよ。
(いやマジで。お前らバックレやがったからわかんねーだろうけど。)

『そうなのかもしれません。でも、僕たちはそうならない道を選ぶこともできるんだ。それが許される世界なら。』
『フン。だが誰も選ばない。ヒトは忘れる。そして繰り返す。』
(当のお前らがまず選んでないし繰り返してるだろうが!ていうかオレは『許さない』とは一言も言っていない!)

『こんなことはもう二度としないと。こんな世界にしないと。いったい誰が言えるんだね?
・・誰にも言えはしないさ。君にも。むろん、彼女にも。やはり何もわかりはしないのだからね。』
(お前らだけは絶対に言ってはいけないはずだ!!運命と遺伝子が許してもオレが許さん。)

『でも、僕たちはそれを知っている。わかっていけることも、変わっていけることも。
だから、明日がほしいんだ。どんなに苦しくても、変わらない世界はいやなんだ。』

『傲慢だね。さすがは最高のコーディネーターだ。』
(ホラわかってないじゃん。変わるチャンスを放棄しやがったのはどこの誰だよ!?てかお前何様?まず『ありがとう。ごめんなさい。』だろうが!)

『傲慢なのはあなただ。僕はただの、一人の人間だ。どこもみんなと変わらないかわらない。ラクスも。
でも。・・だから、あなたを撃たなきゃならないんだ。それを知っているから』

※『どこもみんなと変わらない』と言っている時点でキラの自己認識がおかしいことがわかる。

『だが君の言う世界と、私の言う世界。皆が望むのはどちらかな?今ここで私を撃って、再び混迷する世界を、君はどうしようと言うんだ。』
(皮肉通じてないし。・・てかコイツダメだわ。つうかオレ殺してもこいつらどうせまた引きこもるんだろ?もう手出さないからおとなしく子作りでもしててくれよ。)

このあと、れいの『覚悟はある。僕は戦う。』宣言になり会話が強制的に打ち切られる。キララク不在のなか2年間がんばって国を復興し、世界の未来を憂い曲がりなりにも答えを示した人間に、この虫が良すぎる答えはどう聞こえたのだろうか。


シン=アスカ V.S. アスラン=ザラ
『過去に囚われたまま戦うのは止めるんだ。そんなことをしても、何も戻りはしない。なのに未来まで殺す気か?お前は!』
アスラン、自身の記憶をたどりながら語りかけている。つまりアスランの目にはシンは過去の何かを取り戻すために戦っている人間にしか見えてい。

『わかってる。わかってるさ。だから、世界はもう・・変わらなけりゃいけないんだ。だからオーブは・・・撃たなきゃならないんだ。』
家族の死、クレタ戦時に口だけで何もしないカガリ、オーブ攻略戦時の部下を使い捨てにするカガリ、とシンは3度にわたり『うたい文句と裏腹にアスハのために国民を使い捨てにし、それに疑問を感じない国民性でもある。』というオーブの問題点をじかに目撃している。彼がオーブを本能レベルで敵視する理由はここにあるのだが、アスランはシンがそう思っていることも、きっかけとなった事実についてもほとんど把握していない。

『ふざけるな!そうしてすべてを壊し、未来も殺す。お前がほしかったのは本当にそんな世界か?力か?』
シンの望みは原因の除去であり、大事な人が死ぬような不条理のない世界である。そして、オーブはシンにとって『原因』とみなされるのが妥当なだけの証拠を晒してもいる。シンにとっては壊すものは限定されており、決して『すべて』でもなければ未来を殺すわけでもない。この時点でアスランは論点のすり替えを行っている。また、自分のシンへの認識が『ちがう』と改めようともしていない。(おそらく気付いていない)

『だけど!だけど!』
だけど以下をまとめれば上述のようになるはずだが、いきなり言われたのでシンはうまく言葉にできない。とりあえず『そんなんじゃない!』とは声を大にして言いたかったはずである。『・・・明るい私はサザエさん♪』とでもいえばアスランも混乱くらいはしてくれたのだろうが、残念ながらシンにはボケをかますセンスがない。
なお、ここでルナが割って入っている。ルナもシンに対する理解が浅かったと見るべきか、それとも女性らしさというべきか。

『やめろぉー!』
マユとステラとフリーダムの幻影を見たシンは錯乱しながらルナに掴みかかる。ルナへの『やめろ!そっちへいくな』なのか、あるいは『ルナまで持っていくな!』という叫びなのか。


それにしても、この二人は結構な期間の付き合いがあったはずなのにアスランはシンのことをほとんど理解していない。「あんたって人はぁ!」と言いたくもなろうものである。



・小ネタ。

オーブ出撃のシーンでアスランだけ顔色が異様に悪い。やはり病み上がりのまま出撃を強要されたのだろうか。

カガリってしゃべらないとマトモな人に見える。

小説『ネアンデルタール』によれば、ホモサピエンスが能力に勝るネアンデルタール人に勝ったのは欺瞞の能力が優れていたからである。コーディネーターのお粗末な戦い方を見ていると、戦争で知恵をめぐらすことは遺伝子では強化できない要素なのかもしれない。

冒頭でMS20機がアスキラのいないエターナルに迫っているが、虎は全く動揺していない。『天空のキラ』を考えればえらくなったものである。
と思ったら全編通じてドム隊が14機、エターナルの対空砲で1機を落としている。余裕なわけだ。

シンレイの機体ってたしか核動力ではなかったはず。インパルスも艦内に戻って補給する余裕はなかったので、あのタイミングまで出撃を待ったことも実は意味がある。無駄にしか見えなかったが。

エターナルにしてもアスキラにしてもメサイヤ(レクイエム)に直接攻撃するまでは余力を残している。ザフトの主力軍相手には五分程度の力で戦っていたようであり、つまりは種デスの設定そのものがほとんど無意味だったわけである。

SP全編を通じてエターナルはほぼ無傷。有効打を受けないだけの装甲に守られているからなのだが、ラクス自身も手の内を明かさないように戦っている。

「ほらほら下がんなよヒヨッコは!」とヒルダ嬢。事実を的確に認識した表現である。

議長の回想を見ていると議長が一方的に片思いして告って撃沈しただけにも見える。

バレルロール対策が全くできていないミネルバ。たしか『悪夢』で同じ状況になってた気がする。シンの学習努力を見習えよ。

ミネルバに突っ込む際、ファトゥムはビーム刃の部分が接触している。そのまま貫通しており、同じユニットをレクイエム撃破に再利用したものと思われる。先のアカツキに加えてこのクライン派の戦力。そういえばオーブはSEEDの最初では確か技術がすごいという設定があったはず。もちろん今の今まで忘れてたけど。
※ラクスも現有戦力よりオーブ本土の防衛を優先しており、フリーダム程度の超兵器ならかなり容易に戦線に投入できるのかもしれない。

ここまで見ていると、この戦争でのMS戦は拮抗した性能の兵器の激突する近現代戦ではなく大航海時代に白人によって各地で行われた原住民戦士たちとの虐殺的な戦闘(1対100とかで1のほうが狩のように100を殺しまくれる)と考えたほうが構図として当てはまるのかもしれない。

タリア退艦の時点でミネルバ主砲の射線上にAAがいる。撃っていれば勝てないまでも一矢は報いられたのではないか。

アスランのパイロットスーツはご存知のようにザフトの赤服に酷似している。瞬間的に敵と判断して撃ったメサイヤの兵はすごく優秀なのではないか。

議長はボディーアーマー(防弾チョッキ)をつけていれば助かったのではなかろうか。まぁ死ぬまで撃ち続けられるだろうけど。
と思ったらメサイヤ司令部が壊滅しているのに議長だけ無傷。きっとあのカッコイイ椅子に秘密があるに違いない。てかあの椅子のシステムを一般MSのコクピットにつけるだけでザフトが勝てた気がする。

メサイヤ戦の結末はほぼリアルタイムで全世界に中継されている。ラクスが『情報の力』をよく理解している証左といえよう。

イザークって着実に昇進してるよな。問題行動が多いのにいかにも正しいことをしているように思われてるっぽいし。議長と彼が逆だったら面白そうだ。

シンは戦後にネオを殴ったりしたのだろうか?そのくらいはしてもいいはずだ。

てかキラって何であの墓に来たんだろう。道でいきなりシンに刺される万に一つ以下の可能性を防ぐためか?たしかにアスランはそういう心配をしていてもおかしくはないが。

それを言うならシンもか。
“ずっと来たくなかった”原因に対し彼自身は決着をつけることができていない。とすれば胸を張って報告という状況ではなく、『ごめんマユ。やっぱりダメだった』といって自分の戦士としての人生に区切りをつけることくらいしかできないはずだ。
墓参を決意したとき、シンはどのような心境だったのだろうか?
しかもアスランとメイリンまで同行している。酷なことをするよな。

ラストの握手シーン、シンは満足にしゃべらせてもらっていない。というかキラ、まず『ごめんなさい』だろうが。







ここまでお付き合いありがとうございました。あと一項目でラストです。





・シン=アスカの戦い

家族の死という不条理に直面し、シン=アスカ少年は軍人として立ち向かう道を選んだ。
2年余の挑戦の結果、シンは敗れた。そもそも敗者は敗者以下ではあっても決して以上ではないのだが、シンが勝ち取ったいくつかのものに注目してみよう

まずはこのシーン。



勝ちかどうかはともかくルナマリアを得たのは確かである。もっとマシな女に出会えた可能性もかなり高いが、少なくとも軍人になっていなければルナとは出会っていない。

ところで、この画像を見て皆様何か気付かれないだろうか?よくご覧になっていただきたい。









壊れたヘルメットのバイザーに応急処置が施されている。
シンが気付いたのは月面、ルナの膝の上である。コクピットからルナによって担ぎ出されたというより、シンが放り出されたのをルナが救出したとするほうが自然である。前のシーンではバイザーは壊れていないから、シンが意識を失っている間にバイザーが壊れ、補修されたことになる。シンは文字通りルナに命を救われたのではないか?
だとすれば彼はこの人間関係によって命を拾っている。人に救ってもらった命はそれまでとは別の重みを帯び、人生そのものの意味も変わるのではなかろうか。とくにシンの場合『自分だけ生き残ってしまった』結果ザフトの軍人になっている。墓参を決意できたのも、あるいは彼自身の中で今生きていることへの見方が変わったからなのかもしれない。

戦いに参加していなければそもそも命の危機すらなかったであろうことも事実だが。


続いて、種割れ能力である。いずれ発現していたのかもしれないが『継続的に何かを守らなくちゃいけない緊張を強いられる』状況が彼に種割れを促したのは事実である。日常でどう役に立つか定かではないが、自在にパワーアップできるのはなかなか便利な能力である。

また、ステラの『きのう』と『あした』というものがある。。と言おうとしたのだが何もできないまま目の前で殺されたものに勝ち得たもクソもないよなorz



とはいえ、最大の収穫はやはり



顔と名前が一致しなかったシンにとって、のっけからこの表情で登場したキラのインパクトはでかい。『両雄』のもう一人・アスランの印象が最初から最後までどうしようもなく悪いままだったことも相乗効果になっている。
てかまさか最初からこれを狙ってたのか夫妻は?だとしたら俺は福田邸の方向に向けて一生毎日5回礼拝する


ともあれ、『キラの握手はそんなに重い気持ちではない』との前言は撤回する。このキラの表情、ただの『やさしい』とか『あたたかい』では片付けられないものに見えたのだ。私には、キラはシンにリスペクト(敬意)を払っているように感じられたのである。
前述のようにシンにとってキラ=フリーダムは自身の挑戦の象徴としての意味を持つ。その相手にこんなまぶしいまなざしで認められればシンならずとも感極まってしまうのではあるまいか。

※これをキラが何の事前情報もなく無意識で行っているとしたら、スーパーコーディネーターには人たらしの遺伝子も含まれていると言えそうである。

女性陣を見ている限り、このときの作画はかなりお粗末である。が、キラは全体に非常にいい表情で安定しており、スペシャル版に対するスタッフの姿勢を考えれば、夫妻による偏った贔屓の結果だともあまり思えない。むしろ実際の描き手たちの別の思いが重なってこの表情ができたのではないか。

なれば、キラのこのまなざしこそが、シンの戦いとデスティニーという物語(つまり現場スタッフの戦いでもある)に“意味”をもたらしたささやかな救い、と言ってもよいのではないか。



<けつろん>
めは、くちほどにものをいう。


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