ガンダムコラム(SEED)。


謝辞
このコンテンツの作成について2ch『シンとキラはどっちが強いか?』板の皆様に多大なるご協力をいただきました。記して感謝します。
なお、このページにおける事実誤認そのほか誤りに関する責任は、すべて筆者に責任があります。



ちょっとまじめに書いてみました。37話時点の予想です。


<キラとシンはどっちが強いのか?Ver1.4>
「キラ=ヤマトは最強のパイロット」、とはデュランダル議長の言であるが、そのキラを撃破したのはシンである。
劇中でも何度か干戈を交えているこの二人、パイロットとしてはどちらが強いのであろうか?


先天的要因
この世界には遺伝子改造の概念が存在する。優秀な遺伝子の持ち主の場合、能力の初期値、限界、そして成長率といった要素が生まれた段階ですでに異なっていると、いう可能性が考えられる。つまり、生まれた時点で優劣が決してしまっているのではないか?という疑問がある。

劇中の記憶の限り、“特別な”コーディネーターとして明確な目的の下で差別化が図られた存在二例、キラとクルーゼのみである。キラは“唯一”のものであり、なりそこないだか何かとしてクルーゼ。(だからこそラクスがキラの種を受けるのは覇権獲得には大きな意味を持つ)。キラはあらかじめ、人類最高の遺伝子を持っているということが明言されている。

片やシンはコーディネーター、とのことだが、劇中ではそれ以上の情報がない。
コーディネーターは遺伝子改造された人間という定義だが、物語を作った福田監督のインタビューによれば「人種の違い程度に考えてください」とのこと。また、劇中でもMSを用いた戦闘力で見る限りはナチュラルと大差がない(本来なら一人一人がカミーユやジュドー並でもおかしくないはずなのだが・・・)。

では家族は?ほとんど描写がないので不明だが、シンをパイロット適性に関わる遺伝子を強化する改造を施した形跡は劇中では見られず、また両親が軍人であったとの情報もない。つまり、肉体のパフォーマンスはともかく、シンがパイロットとしての決定的な優位であるという遺伝子的な根拠はない。ここではシンを“普通の”コーディネーターとしてはパイロットとして最も傑出していたアスランやイザークと同程度と考えてみる。

つまり、遺伝子的な能力値ではキラ>シンとなるわけだ。


では、この遺伝子が優れていることはどう影響するのか?
砂漠でのバルトフェルド隊との戦いぶりや水中戦を見る限り、少なくともキラの適応性がすさまじく高いのは確かである。また、フリーダムガンダムを得てからの動きでわかるように多数のものを同時にロックオンする能力、つまり動体視力が高く視界が広いのも確かなようである。

一方、シン。
彼に見て取れる性質は地道な努力を積み重ねるということであるであることであろう。孤児となり強い目的意識を持ってザフトに入隊している。そこで移民でありながらわずか2年で議長から最新鋭の特別機を与えられるまでにのし上がっている。相当の努力をしているはずである(対フリーダム戦のときに見せたような準備は慣れているのであろう)。
また、人間関係についても、時折見せるエキセントリックな行動が許容されているようである。対フリーダム戦時の彼に対するサポートに象徴されるように艦内での人間関係も決してまずくはない。劇中で人と触れ合う描写が少ないだけに、普段から見えないところで相当コミュニケーション努力もしているのであろう。いわば周囲に気を配りつつ黙々と自分を磨いていくタイプである。

一流の条件のひとつが何事にも流されず人何倍もの努力ができる、いわば努力の天才である、という話を聞いたことがあるが、まさにシンにこそ当てはまるのではないか。

では、シンの適応性はどうなのだろう?
初接触時に接近して切りかかってキラに対し棒立ちであったこと、ロドニアでレイが倒れたときにおろおろしてばかりだったこと、ステラの最期のときになにもしなかったこと、などから、とっさの対応速度においてはキラに大きく劣るといわざるを得まい。
一方で、何をすべきかわかっているときのシンは速い。ステラを医者に見せたときやコアスプレンダー出撃の際のきびきびした動き、あるいはキラに勝った戦いのときを見てわかるように、彼は“知っているもの”相手なら存分に力を発揮することができるのだ。そして彼の選んできた道を見る限り、“知っているもの”を広げる努力を常に惜しんでいないようである(偏ってはいるものの)


誤解を恐れず簡単にまとめるなら、、天才 対 秀才の構図である。


“種割れ”
いわゆる“種割れ”という現象がある。能力が大幅にあがるパワーアップ現象のことだ。劇中では数名がこの現象を見せているが、キラは最初にこの“種割れ”をした人間であり、また自身の意思で自在にコントロールすることができている。この“自在のパワーアップのコントロール”は、その機体とあいまってキラ生来の強さを強力に補っている。

一方、シンもまた“種割れ”が可能である。周囲が驚いていないため、アカデミー時代から“種割れ”は何度か発現していたと思われる。彼が自らの意思で種割れが可能かは微妙なところであるが、彼が必要だと認識したときには必ず発現している状況を見ると、恐らくはかなり任意に発現が可能なのであろう。とはいえ彼の自覚があるのかは不明である。“歯を食いしばって限界を超える”程度なのかもしれない。だが、一方的に“種割れ”できるというキラの優位が存在しないのは確かであろう。


戦闘力の特質
では、両者のパイロットとしての資質の優劣はどうなのか?
両者が対等の機体で戦っていない以上、
正確な判断は現時点では不可能である。

キラの特性は、一言でいうと高速移動しながらの正確な攻撃である。その人間が“同時に多数の目標を大火力で撃破しうる”MS、フリーダムガンダムに乗っているため、議長の“最強”発言やCE世界におけるキラの英雄としての位置づけが不動のものとなっている。フリーダムガンダムを得てからのキラは、ほとんどの場合最初の一撃で勝敗を決してしまっている。その決定的な一撃を回避するのが極めて困難であることが彼の“英雄神話”の背景ではなかろうか。
劇中では数件の近接戦闘も描かれている。対プロヴィデンス、対セイバー、対グフ、対デストロイ、対インパルスなどである。敗北した最後の一例以外に共通するのが、相手の反応をはるかに凌駕した攻撃速度である。接近されるのがわかっていてもこちらの攻撃が当たらない、キラの攻撃をよけることもできないという描写は繰り返し描かれている。つまりキラの身体的要素は彼の戦闘速度に影響し、その結果回避運動と命中率の非常に高度なレベルでの両立が可能となっているのである。ここにキラの強さがあるのではないか。

なお、ここでの戦闘速度というのは攻撃や相手の存在を認識して正確に対応することが可能な自分の移動速度の上限とする。つまり走りながら銃を正確に移動目標に対して撃てる人間は止まってないと目標に当てられない人間よりも戦闘速度が勝る、と言うことになる。


では、シンはどうか?
劇中で見る限り、シンは間合いの感覚が際立って優れていると思われる。つまり、コクピットを紙一重で(パイロットを殺さないように)傷つけたことが実に4回、至近距離で反射を生かしてライフルを反射させたのが1回、キラの正確無比な速攻を紙一重でかわしたのが3回と多くの事例で確認することができ、またシン自身もソードシルエットやビームサーベルを多用している。

もう一つ注意すべきは、シン自身が肉薄戦闘を好む傾向にあるということである。対キラ戦では好機と見るや果敢に懐に飛び込んでいっている。対アスラン戦でもしかりであり、また対艦戦闘や基地の破壊といった戦闘でも相手の攻撃にさらされる距離まで肉薄している場合が多い。特にキラ戦の場合はキラも抜剣しており、相打ちの危険が生じている。それでもあえて飛び込んだのは紙一重で見切れると本能的に踏んだのであろう。
シンが射撃が不得意ではないことは劇中でも表現されているが、ここぞのときに用いている武器がサーベルであるところから、より安全な遠距離での戦闘よりも自分で手応えを確かめられる距離での戦闘を好むという傾向があるといえるのではあるまいか。


ここで、シンにあってキラにない決定的な差がある。
シンは自分と同等の相手との戦闘経験においてキラよりも圧倒的に勝るのではあるまいか。記憶する限りキラと“対等に”戦えたのはアスラン、クルーゼ、そしてシンのみである。互角の相手と何合も渡り合った経験はキラには数えるほどしかない。接近される前にフリーダムの火力で常にねじ伏せていたことが、この傾向に拍車をかけている。
その点、アカデミーにいたシンは恵まれている。レイやルナマリアを始め切磋琢磨の機会はいくらでもあったと思われる。シン特有の間合いの感覚はこの環境から生まれたものと推測できる。

つまり、キラの場合は豊富な撃墜経験はあっても戦闘経験という点では乏しいのではないのだろうか。逆にシンの場合、模擬とはいえ戦闘経験の素地が段違いであり、実戦によって急速に発芽していったと言える。いわば狩人と兵士の違いである。言い換えるなら、才能と実地での経験だけで磨かれた我流のキラと基本どおりの訓練をみっちりつんで努力したシンという構図でもある。

その結果が二人の戦闘に現れている。最初の接触ではシンが戦闘モードになる前にキラの一撃がシンの戦闘力を奪っているものの(つまりキラの攻撃速度がシンが認識速度を上回っている)、2回目以降の“本気になった”シンに対し、キラは攻撃を当てるのに相当苦心している。キラにしてみればシンは“自分の戦闘速度に対応できる”初めての相手であり、ゆえに同格の人間との接近戦も想定外だったのである。一方、シンにしてみれば本気になればキラの攻撃をよけることそのものは可能であり、またキラを仮想敵とみなして訓練していたことがシンの勝利につながっている。

とはいえ、この時点ではキラがシンを戦う相手として認識していなかったのも事実である。キラが本気で反撃したのは最後の最後であり、それでもシンの防御力とインパルスの機体特性を認識した上のものではないストレートな攻撃にすぎなかった。あくまでもアスラン程度の相手を想定した攻撃でしかなかったわけである。


今後の展望
攻撃の天才キラと間合いの達人シン、今後はどうなるのか。
劇中での情報を見る限り、適応速度ではキラに分があるように見える。シンが勝つことが出来たのは先にキラを敵と認識できたからであろう。キラがシンという存在を機体を含めて真に認識し、同格の機体で挑んだらどうなるのか?遭遇戦であれば反射速度と順応性の差でキラに軍配が上がるのではあるまいか。

一方で、この二人は出たとこ勝負 対 入念な準備という対決でもある。その場での爆発的な成長力ではキラに軍配が上がるが、戦闘の間での地道な努力ではシンが勝る。準備期間が与えられた場合にはシンがかなり有利に仕上げてくるのではあるまいか。
してみると、お互いを敵として認識している状態では努力に勝るシンのほうが序盤は圧倒的に優勢になると思われる。そのまま、キラが慣れてくる前に畳み掛けてしまえばいいのである。逆に、時間が経過するほどキラに有利になっていくのではないか。

ここまでで、遺伝子による差異が両者の最終的な限界を規定しているという証拠はまだ見えない。つまりシンがどうあがいてもキラに勝てなくなる瞬間が出てくるのか、そうではないのかは今後を見守るしかないといえる。

もう一つの問題が戦闘速度の持続時間である。キラとシンの戦闘速度は果たして互角なのか?34話では両者の接点が極めて限定された瞬間でしか発生しておらず、シンがキラレベルでの戦闘速度を維持していた時間そのものが短い。キラの攻撃機会そのものが少なかったためスポットの集中での対応も可能といえば可能なのである。乱戦となり対峙が長期に及んだ場合、シンはどこまでキラと互角たりうるのか。この点も今後の課題となろう。


まとめにかえて
簡単な表にしてみた。

特性

特性 経験 流儀 戦闘特技 任意の種割れ タイプ
キラ 即応性 撃破経験が豊富 我流 高速移動しながらの正確な射撃 自在に可能 遠距離攻撃型
シン 努力 戦闘経験が豊富 正統派 天才的な間合いの感覚 可能 接近戦闘型

予想される結果
遭遇戦では 通常戦闘では
キラ 圧倒的有利 時間がたつほど有利
シン 絶望的 序盤有利


どうもシンに分が悪いようである。勝ち目があるとしたら、34話のようにキラの態勢が整わないうちに一気に戦闘力を削るしかない。結局、議長の発言も、キラという人材を真っ先に取り込もうとしたラクスの判断も正しかったのではあるまいか。

 

(2005.7.4)

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