とりあえず泣いて笑った今回。CMにしても台詞回しにしても話の本筋にしてもやけに気合が入っていなかったのではなかろうか。
このシリーズには長めの冬眠の習慣を持つ敏腕スタッフでもいるのだろうか?


ガンダムSEEDデスティニー38話 新しき旗



<あらすじ>
議長軍がロゴス本拠地・ヘブンズベース攻撃。苦戦するがシンたちの活躍により攻略。


<みどころ>
今回より新OP。ガンダムばっか。話題のウズミさまの遺産(アカツキだっけか?)も登場。乗る人は・・・やっぱカガリだよな。機体の性能だけでなくパイロットが誰かによって強さが大幅に変わる世界なだけに一抹以上の不安を感じるのは気のせいか?というよりこれ以上最強機出してどうするんだろう。
とはいえ走るシンは好感度大。方向性と結果はともかくこの少年にはひたむきに何かを追い求める姿がよく似合う。

そういえばラクス、いつの間にドムのおっさんたちをヘッドハントしてきたのだろう?(孤児院経営をしているので若年層が補充できるのはわかる)オーブかプラントで「新規事業を始めたけどやっぱり失敗した退役軍人」でも捕まえてきたに違いない。
見返して気付く。新OPって新規映像をほとんど使っていない。てかまたピンク戦艦ですか(TT

さて本編、総力を挙げて抗戦を試みる地球連合軍を議長軍が呑み込んでゆく。戦闘というよりは滅びの話だから全編に切なさが漂う
図らずも?スタッフなりの戦争観というものが俺の戦争観にイイカンジにツボであった。


空母を連ね陸海空宙より迫る議長軍に対し、「守るのではなく攻めるのだ」とネコ男。
「民衆はバカだからすぐだまされる。逆に言えば勝って見せれば挽回が可能。だから勝たねばならない!!!!」とのこと。






これだよ、これを聞きたかったんだよ
リーダーの面目躍如とも言うべき堂々たる見識である。のっけからやられましたという感じ。これで戦術に裏打ちされてればなぁ。

この後のロゴスの皆さんの発言もなかなか。

「支配者が取って代わるだけで現状は変わらない」
「神のような人間や正義の味方がいないことは私たちがよく知っている」
いずれも箴言であろう。どこからともなく現れた軍神キラヤマトと青くて白いロボットが全てを解決してくれるこの世界でなければ。

今回描かれたロゴスメンバー、確かに胡散臭そうではあるが、悪の親玉というよりは孫にも滅多に笑わない大企業の会長、程度の感じである。それでもやっぱり名前が“ロゴス”。固有名詞くらいつけてやれよやっつけ仕事でいいから。


かわって、ミネルバ。出撃を前にシンとルナが熱く思いを交わす。
ルナマリアの心変わりの原因は「ロゴスに二人が狂わされた」との認識による模様。同時代の人間から見れば至極真っ当な感覚なのであろう。少なくとも偏った情報の中で生きてきた特進コースの高校2年生程度の認識としては大きく外れてはいないのではないか。誰が主人公かを知っている視聴者から見れば違和感バリバリなのはもちろんだが。

むしろ理解しづらいのはシンの涙。唐突なので違和感がある。彼は何に対して涙を流したのであろう?
私は「負けないから。だからシンも(がんばれ)」に反応したと考える。
シンをほめた人間は多かれど、「お前も大変だなぁ」とねぎらった人は記憶にない。これまでの彼の奇行?や暴走、それに今回の話全体を見ていると、『圧倒的な現実に対するやるせなさ』が相当なストレスとなってたまっていたと思われる。つねに「出来て当たり前」で期待に応え続けているものの、自分の無力をどこかで知ってしまって大きな絶望を抱えている。その絶望を無駄と知りつつ頑張ることによってしか埋められない少年。それがシンなのではあるまいか?
つまり、シンははじめて本当の意味での“理解者”にめぐり合ったのである。

だとすれば、シンとキラの対決もとても根の深いものになる。このふたり、戦力や戦果という意味では大差がない。にもかかわらず、シンには陰惨なイメージが付きまとう。似たようなことをやっていてもキラの行為は『賞賛』されるのにシンの行為は『殺戮』となる暗さがある。むろん不殺という手段が密接に絡んでくるのだが、シンが渇望しても未だ果たせないことを軽やかにやってのけるキラに対し、一種のコンプレックスがあってもおかしくはない。少なくともシンは『同年代の英雄』としてのキラしか知らないはずなのだから。

また、今回の会話からルナの中でのアスラン事件がシンではなくロゴスのせいだという風に意識の摩り替えが行われたことが見て取れる。女って強いねぇ。

どうでもいいがミーアの警護は女性兵士じゃなくていいのだろうか?この世界なだけにこの無名兵士に名前がついた瞬間に新たなトラブルの火種になる気がするのだが。


つづく



※追記
そういえば前回の感想で「しょせんアスランだからあっさり追いつかれる」、という部分と「メイリンをひざにでも乗せてやれ」という部分に突っ込みを受けた。

前者については、時間が命である状況とアスランの受けた訓練を考えれば「あまりにもあっさり追いつかれすぎではないか?」という疑問である。37話のような最悪の状況は予測は可能で、逃走ルートの選択や潜伏によって回避するのはあの二人は能力的には可能であったと考える。
では何が「しょせん」、なのか?そう、あのバカ正直なところが、である。それ自体を否定する気はない。あの状況とは相性が悪い特性だと考えるのだ。

後者については恐らくは指摘が正しい。私は逆襲のシャアにおけるサブシートとZZやZ、それに30話での状況から深く考えずに言ったものである。強いて根拠を挙げるなら、より耐久力の低いメイリンのコンディション維持こそが二人の逃走可能時間に直結するというものがある。
ええ、どうにも気になって見えたんですよあのメイリンの位置が。


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