(前半はこちら
今回はギャグでも二度吹いた。ルナのセリフとフレッツなのだが、「出番が〜」にしても「忘れてた?〜」にしても、あれが声優の方の偽らざる心境なのではあるまいか。


ガンダムSEEDデスティニー38話 新しき旗(後半)



<あらすじ>
シンたちの活躍によりヘブンズベース陥落。


<みどころ>
全世界が注視する中、最初に仕掛けたのは地球軍。予告なしに攻撃を開始する。
戦車・MA・水中用MSにミサイル群、そして虎の子のデストロイにエクステンデッドと文字通りの総力戦。ムキーなんて卑怯な!と驚き怒るザフトの皆さん。のんきに構えていたところを痛撃される。最後通牒を出しておきながら敵が反撃してくる可能性を全く考慮していなかったらしい。それ以前に彼らは確かまだ戦争中だったはずである。ザフトが勝手なウワゴトを言い出して勝ったつもりになっていたようだが。

連合に対しやや遅れ気味に反撃を開始する議長軍。あらゆる空間で全面的な激突になるものの、周到に準備をしていた地球軍の守りは堅く、軌道上からの降下部隊は全滅、主力部隊にも相当な損害が出る。戦局に業を煮やしたシンたちの出撃によって形勢が劇的に逆転、ついには陥落に至るという展開。
そのさなかにスティングがこれまたやっつけ仕事的に消されたのはともかく、いくつかのポイントがある。


かませ犬だったせいか5機もいながら塵芥のように瞬殺されたデストロイ。
ベルリン戦ほどに脅威ではなかったのは新ガンダムの強さが原因というだけでもない。(そういえば新キャラ全員がマトモに活躍したのって今回が初めてだな。9ヶ月もたってるのに。)

死角のないデストロイだが接近戦に弱いというのは周知の事実である。その弱点を補うためにMS部隊による支援が不可欠となる。前回の苦戦はマトモに切り込める戦力が少なかったこともさることながら、ネオたちによる妨害の効果も無視できない。ところが今回、5機いることで1機ごとの直衛が手薄になり、その隙を突かれている。また、5機いることで逆に死角ができてしまっている(同士討ちとなるため)。見る限りではデストロイの火力は1機でも十分に艦隊を制圧できるのだから他の4機は邪魔でしかなかったのではないか。

加えてエクステンデッド。本編を見ている限りではパイロットとしてより破壊工作員として運用した方が効果を挙げている。どのみち使い捨てのつもりだったようなので、デストロイになど乗せていないでジブラルタルあたりに潜入させてゲリラ活動をしていればかなりの打撃を与えられたのではあるまいか?平行してデストロイ何機かを遊軍にしてザフトの拠点を攻撃させるなり、伏兵として艦隊の脇をつくなりさせていれば十分に勝てたような気がする。

続いて、兵器の運用全般。
戦車もMSも機動兵器のクセに全く動いていない。止まったままやられているのである。位置を変えながら戦うのは基本中の基本のはずなのにどうしたことか。
ザフトの場合は軍組織がしっかりしていないらしいので各人が勝手に戦っているということはアリなのだろう。パイロット個人がとっさの事態に対応できなさそうなこともこれまでに何度も示唆されている。(こんな連中でも正規軍と互角に戦えるからこそMSが評価されたわけだが)。

問題はやはり連合。
近代軍隊なので組織的、かつ効率的な対応ができるはずなのである。スタッフに自衛隊経験者を入れろという意見をあえて脇において考えるなら、連合はやはりMS主体の戦い方には慣れていないのではあるまいか?戦線に投入はされたものの、これまでのところMSの特性を生かした戦い方がなされているのを見たためしがない。本来ならばヘリと戦闘機と戦車の役割が出来る兵器であるからしかるべき運用が可能なのに、である。ザフトに引きずられる形で大量配備してしまったが使い道に困っている、というのが実情なのではあるまいか。戦争の経緯を考えるなら、連合はMS戦より対MS戦の方が得意である、という仮説はいかがだろう。

では、連合はどうすればよかったのか?
MSが「ほとんど動かない的」であるのだから、地球軍に有り余っている人的資源を使えばよかったのではないか。具体的にいうならば歩兵用の使い捨て対MSランチャーの大量配備である。たとえば飛行機を落とせるロケットランチャーなら当然MSにも有効なはずで、10発使わないとMS1機が落とせないとしても、なお元が取れると思えてならないのである。
地の利もあるわけで、山ごと要塞化する余裕もあったのではないか。硫黄島のように縦横にトンネルをめぐらせ、歩兵が位置を変えながらMSを翻弄する。艦隊のシーンを見る限りザフトの総兵力自体はさほど多くはなさそうである(守備側の人数の方が攻撃側より多いのではあるまいか?)から、十分に有効な戦術だったのではあるまいか?それこそデストロイなんぞ作ってないでバズーカ作れよという話である。別の物語になっちゃうけど。

してみると、ロゴス。
社運をかけた商品が大外れして倒産した企業の典型と言えそうである。トップのこの見識なら議長が何もしなくてもいずれ滅びていたのではなかろうか?


続いて、普通に勝てたはずの地球軍がなぜ負けたのか?ということに関連して。
今回、ネコ男もシャアも不可解な行動をしている。
ネコ男は「勝てますから先に仕掛けましょう」、と煽っておいて戦力を無駄打ちした挙句、自身は陥落間際に単身脱出している。それも敵に制圧されているはずの海中への脱出。しかも普通に脱出成功している模様。
議長は、といえば応戦命令の発動がやけに遅い。そのため、序盤の連合の攻勢でかなりの戦力が失われ、議長自身、戦死の恐れもあったはずである。逆転のきっかけになった3ガンダムにしたところで出撃できないまま海の藻屑、ということも十分にありえたのだ。にもかかわらず、議長には全く危機感が見られない。

これらの事実は、果たして偶然なのだろうか?

改めて、「当事者同士合意の上で間引き目的の戦争が展開されている」という説を押したい。つまり、れいのMA推進派閥(エセ新鋭機ウィンダムを支給されたかわいそうな人たちを含む)は一網打尽にされているし、戦局を見ればザフト側も「死なせる人間」の選別が事前に可能だったわけである。ネコ男とシャアの連携が前提になるわけだ。(ネコ男が以前に「デュランダルめ・・・」と歯噛みするシーンがあったが、これはきっと「・・・俺の家は壊さない約束だろ」という苦衷の呻きだったに違いない。)

政策担当者の機微、といえばユウナ親子。地球軍擁護のノーテンキな発言と見せつつ、地球も議長軍もギリギリなのだという貴重な情報をしっかり漏らしている(=地球軍には主要な基地はもう月しか残っておらず、議長軍も頭をつぶせば終わり)。地球・ザフト双方はじめ諸勢力のスパイが入り乱れる諜報最前線のオーブの政治家らしい、いかにもな言動である。この男もやはり、一本筋の通ったなのであろう。

いつの日か、一市民に戻ったユウナと父との間で
「国のためとはいえお前にはつらい思いをさせたなぁ。変態のフリなどさせて
「・・・いや、いいんですよ。父さん」
などという心温まる会話が見られるのかもしれない。(この仮説については本編がどう推移しても反証が出ることはないのではないか。)

そのオーブにはそういえば衛星軌道からの狙撃技術があったような気がする。みんななんで使わないんだろう?

ラスト、ヘブンズベースの終焉を象徴するかのように最後のデストロイが討たれる。
シンの「これで!こいつを討てば!せめて・・・」のセリフにこもる、万感の思い。
「せめて、一撃で楽にしてやる!」という悲痛な決意そのままにコクピットが切り裂かれ、崩れ落ちるデストロイ。
今回アークエンジェル組よりもシンたちの方が心なしか作画に気合が入って見えたが、上のセリフの勢いとあわせ、この作品に対するスタッフなりの主張が垣間見えるというのは考えすぎだろうか?

・・・・・シンが『エクステンデッドは男なら殺してもいい』とか思ってそうだ、という議論はこの際ナシです、念のため。


それにしても、愛人はべらせて大型船乗り回す長髪のチャラ男がピクニック気分で老人と動物と障害児を虐待するとはとんでもない話である。


ところで。
下の画像を見てほしい。この男はいったい誰なのだろう?




いやもちろん議長なのだが。やけに若い。
以前に隠棲時のラクスが若返りの研究をしていたのではないか、と言及したことがある。議長のこの様子では、彼も若返りが狙いなのではないか。つまり彼らの利害対立は世界の覇権などではなく時間への挑戦の主導権争いなのではなかろうか。想像をたくましくさせてくれる瞬間である。


<けつろん>
あたらしいじだいをつくるのは、ろうじんではない!!

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