タイトルについて考える。これまでの話を振り返る。
"反撃"と切に言いたいのはむしろ議長なのではなかろうか?
議長側がまともにキララクを追い込んだためしがないような気がするのだが。




ガンダムSEEDデスティニー43話 反撃の声


<あらすじ>
復活したアスランの加勢によりオーブはザフトを撃退。


<みどころ>
なんといってもオーブ上空での新旧主人公対決。映像のみならずBGMにも気合が入っているため非常に面白い。
問題はただひとつ、本来目立つべき側とそうでない側が完全に逆なことである。

今回は全編を通じて非常に印象的だった“対決”を軸にふりかえっていく。



1:ラクス VS 困った部下たち

ラクス=クラインが何年もかけて集めた部下たちは、能力的には非常に高い
が、将来が保証されている組織からわざわざ脱走したりいきなり悲観的になって反抗しだしたりとクセが強いのも事実である。
こうした、『能力は高いが性格に難がある』人間たちは我々の日常でも散見されるが、どう対応すればよいのであろうか。

今回、冒頭のアスラン出撃にひとつの示唆がある。まずは下の画像を見て欲しい。




「あぁ゛ん?何見てんだよコラ」とでも言いそうな非常に人相の悪い女性であるが、驚くなかれラクスである。
とはいえ、我々が知るラクス・クラインといえば笑顔が魅力的な女性であり、この世界でもそう認知されているはずである(参考資料)。


ラクスの本来の性格はともかく、この『ギャップの使われ方』というものに注目したい。
不良が普通のことをするといいことをしたように見える。女性を落とす手段の一つとして普段冷たくしておいて局所的にやさしくする、というものもある。
人には慣れや先入観というものがあり、感覚というものもきわめて相対的なものである。

つまり、上のような表情でも普段怒ってばかりのフレイやミリィなら「ああどうせまた機嫌悪いんだろうなクワバラクワバラ」ですむところが、普段笑顔しか見せてないラクスの場合では失禁してしまうくらいの凄みを伴う恐怖として伝わりうるのである。


今回のラクス、アスラン出撃の一報に驚くマリューに対し、CICに入ってきて『艦長。どうか彼の思うとおりに。』とだけ言って、後は無言での威圧(詳細な解説は文末の注参照)。

『私が消耗品をどう扱おうが勝手だろうが。手足のお前らはハイハイって言われた通りにやってりゃいいんだよ。』と言っているように思えてならない。

このナマの恐怖というものはアスランに対してはダイレクトな威圧になるし、同時にアークエンジェルにも見せしめの意味がある
部下の叱り方というものはビジネス本でもよく扱われるテーマであるが、さすがにSEED、起業家が見ても大いに得るもののある含みとなっている。

気になる“効果”のほうだが、
アスラン→心理戦まで駆使した鬼神のごとき活躍。
アークエンジェル→掟破りの水中からのアウトレンジ攻撃でザフト艦隊撃退。

結局、彼らの活躍で戦の流れそのものが決定されてしまっている。
つまり今回、冒頭のラクスの数秒ですべてが決してしまっているのだ。まさに「ラクスの一睨(いちげい=ひとにらみ)」というほかなかろう。




2:The通信戦

この世界の人間たちは他人の言葉に影響を受けやすい。「MS戦闘でも通信を使えば労せずして勝てるのではないか?」と以前に述べたことがあるが、今回のアスランがお手本とも言うべき見事なゆさぶりをかけている。

キラVSシン&レイの巴戦において、シンがキラをロックしたまさにその瞬間にアスランの助けが入る。これがキラなら砲撃で物理的に妨害するところなのだろうが、アスランがとった手段は『声』による妨害である。そのまま通信を開いて顔を出しシンに語りかけるのだが、これは実に効果的だったのではないか。

なぜなら、これまでのケースを見る限り、
暴力による妨害がなされた場合、シンの戦闘力は上がりこそすれ下がったためしがない
上、知っている人間の呼びかけによってシンの戦闘意欲は確実に低下している。同時に、キラに続いて「殺したはずの人間が生きていた」ことにより、シンの自分の腕に対する絶対の自信そのものが相当揺らいでいる。(このことがあとでシンの必殺攻撃が失敗する重大な要因となっている)

白眉は論戦。
アスラン、『お前、何をやっているかわかっているのか?戦争をなくす。だからロゴスを討つ。だからオーブを討つ。それがお前の望んだことか?』とシンに問いかける。動揺するシン。
もちろん内容そのものについてはシンはアスランを十分論破できる(ロゴスについてはステラやロドニアを目撃しているし、オーブについてはカガリの口だけで国民を使い捨てにする偽善の一部始終に立ち会っている。当然動機付けとしてはシンの方が強い。何よりシンはフェイスの力を目的のために有効に使っているがアスランは使っていない)

シンの弱点、といえば“自分の目的について振り返って考えたことがない”という点である。そしてこの点だけはアスランに一日以上の長がある。
つまりシンの動揺は本来は初めての質問に面食らったことによるもののはずなのだが、アスランはその傷口をシンの全否定にまでうまく広げている。みごとな心攻戦である。
いや、シン攻戦というべきか。

結果としてシンは冷静さを失い、攻撃が単調になっていく。当然ますます当たらなくなり、やけになって必殺技を繰り出したところを狙い済ましたカウンターで破られている。
アスランの体調を考えれば、こういう形の『狙いを絞った短期決戦』しかありえなかったわけである。
とはいえ、シンにもチャンスはあったのだ。アスランがコクピット内でテンパっている描写はなされており、モニターを落ち着いて見てさえいれば冷汗や包帯などから『倒したはずの人間が今この場所にいるカラクリ』を看破できた可能性はあったのである。だからこそ、まず声でシンの判断力をつぶしたということが重要な意味を持つ。実にうまい流れ作りではあるまいか。アスランやればできるじゃん。

ちなみにこの場合、シンは「じゃああンたは何をしたんだ?フェイスだったくせに。何でもできたくせに!俺たちの期待を裏切りやがって!ハイネさんを殺しやがって」とでも答えてあげればよかったのであろう。アスランが勝てなくなるので実現しないだろうが。




3:セイランとアスハ

今回、激戦のさなかとってつけたように死ぬユウナ。以前に「MSに踏み潰されたりしないか心配」と述べたことがある本当にそうなってしまったorz。前回の話でウナトも死んだぽいので二人とも生き残る説は無残にも打ち砕かれたわけである。希望の星は落ちたのだ。

セイランの血のにじむような努力に守られていたにもかかわらず、手のひらを返したように非道な行いをするオーブの民衆。ジブリールのセリフとあわせ、衆愚政治の危険を訴えた福田監督の熱いメッセージなのかもしれないが(これぞ音)、セイランの真の実力はどういったものなのだろう。

まず、ユウナ『本島のセイランのシェルターに行く』と訴えていたが、これは本当に安全なのか?ウナトの末路を考えれば微妙である。
とはいえあの場所は行政府のシェルターとも考えられるわけで、ジブリールのシャトルが発進した場所も『セイランのシェルター』のひとつなのかも知れない。

では、ユウナ終焉の地となったあの場所は何だったのか?
二通りの見方がある。

ひとつは、粛清のための場所。
以前にあるサイトで「金色の手(アカツキ?)がオーブ市民のシェルターを壊しているシーンがある」との指摘があった。戦争のどさくさにまぎれてアスハの邪魔者を一掃してしまうわけだ。カガリの外交戦略の中に『戦犯(ユウナ&ジブリール)を全世界にさらして見せた上で正当性を主張する』というオプションはなかったようなので、この説にもそれなりに可能性はありそうである。つまり、あのシェルターでユウナが人知れず暗殺されているという構図である

もうひとつが、セイランシェルターへの抜け道だった可能性。
本編を見る限り、ユウナもウナトもジブリールと合流する手はずだった模様。また、ユウナとともにいた兵士にユウナに対する敵意が感じられない。(呼びかけに敬称をつけている。銃を突きつけていないばかりか武装していない兵士もいる。逃げたユウナに銃を構えてもいない)
彼らは連行するふりをしてユウナを脱走させるつもりだったのではあるまいか?カガリが軍部に絶大な人気がある、という設定や防衛本部の兵士たちと“連行”した兵士たちの態度に温度差が感じられてならないのである。

つまり、本当はあの兵士たちはユウナの手引きをするはずだったのだが、説明をする前にユウナが殺害を懸念してパニックに陥り、あの結果になったのではないか。密な連絡が決定的に重要である好例であろう。だから話し合えよおまえら。


とはいえ、こうしてみるとアスハの人気というものも微妙である。大勢がカガリに傾いた中でもジブリールやセイランに忠誠を誓う人間たちが健在なのだ。
たとえばセイラン側の協力ひとつでジブリールの退路の把握も可能であったろうし、シャトルの阻止も事前に可能だったはずである。あるいはジブリールが周りの兵士たちに売られていてもおかしくない。が、実際にはそうしたことは起こっていない。

彼らはあの状況下で脱出に成功している。CE世界の007・ダコスタ並の脱出能力であろう。忠誠心も(方向性はともかく)申し分ない。ジブリールの行きそうな場所をリストアップするという基本すら押さえていないカガリのスタッフたちと好対照である。

参考までにアスハを信奉する国家公務員スタッフを列挙してみる。(エリカは公務員ではない可能性あり)

トダカ           → 勝てるはずの戦いで将兵を巻き込んで国の備品を損耗(空母の建造には大金がかかりますハイ)
馬場           → カガリをいさめるため部下まきこんで特攻。
アマギ          → 職務放棄してテロリストにいそいそと参加。
エリカ          → 国難に強力な決戦兵器の使用を許可せず。第一波攻撃で軍民に多大な犠牲。
キサカ          → ザフトからの優秀なスタッフの引き抜きに貢献。
ソガ            → 職務放棄した挙句政治家に対し逆切れ。
ゴウ・イケヤ・ニシザワ → 国の税金ではまともに働かないが独裁者のためには骨身を惜しまず働く。

・・・・キサカ以外マトモなのいねーじゃん(TT

こうしてみると、オーブでの出世コースはセイラン閥だったのではあるまいか?アスハが掃き溜めというだけなのかもしれないが。(実際ジブリールのシャトルも危うく見逃すところだった)。セイラン側とアスハ側の人材の質に差がありすぎるように思えてならない。
オーブの国のありようを考えれば、日本と同じく軍人がエリートとみなされていない可能性はきわめて高い。実際に上述した限りでは皆さんそろいもそろって社会性が絶無である。とはいえこのまま勝ちそうなのはカガリであるし、本編であからさまにひいきされているのもカガリである。

つまり、SEEDデスティニーとは社会の日陰者だった軍人たちによる革命(クーデター)の話でもあるのだ。

このことを踏まえてミーアの「オーブはなぜロゴスをかくまうのか?」という演説を聴くと「オーブも同じことやってるからじゃん」という答えにたどり着いてしまう。うーん不思議だなぁ。



以下、小ネタ。

そういえばOPで意外なことに気がつく。アスキラの表情が実は手抜きされてる。カガリにいたってはステラにしか見えない。やっぱりスタッフの反乱とかあるのかねぇ。
ていうかネオさんが白い軍服でちゃっかり出ている。この話って必要じゃないところでばっちり細かいよな。


シンレイVSキラ。キラがシンをあしらって寄せ付けないのが予定通りなのはともかく(主役なのに(TT)、実はシンは種が割れていない。キラから積極的に攻撃を仕掛けていないとはいえ、種割れキラとノーマルのシンでもほぼ互角に戦うことはできる模様。少なくとも牽制くらいは可能なようである。

レイの攻撃で隙ができた瞬間にシンがビームを撃ちかけようとするが、ランチャー展開とロックオンにまごついているうちにアスランが乱入してしまう。
そういえばシンとレイ、チームとして戦ったことは実は皆無なのではないか?そういうシーンを思い出そうとしたがなかった気がする

オーブ防衛本部のオペレーターに狙ってるとしか思えない美女登場。こんなヤツいらないからルナとかにスポット当ててくれ。

自分の戦う理由を振り返るときにルナのことを思い出さないシン。彼の戦闘は『復讐』ないし何かへの『けじめ』であって『守る』戦いではない模様。

とりあえず最初から潜って戦えよアークエンジェル。とはいえ不殺が破られているのでラクスに『うだうだいってんなよTPOってモンがあンだろ?自分らがくたばっちゃ意味ねーんだよ。どーせ水中だろ?見えやしないし』くらいの発破はかけられたのかもしれない。

ザフトもオーブも軌道上に戦力を持っているはずである。軌道上で待ち構えていればジブリールって簡単につかまるんじゃないか?
というかジブリールはなぜ最初から月に行かなかったのだろう?彼の最終兵器・レクイエムは『長旅で経験値をつんだ生体ユニットのネコ』が必要なのだろうか。
というより政治家が一緒にいないとマトモに機能しない軍隊。まず組織体系を改めたほうが手っ取り早い気がする。

誰もが突っ込むであろうポイント。ルナマリア合体必要ないって(TT。
あまり突っ込まなさそうなポイント。ムラサメの連中、ジブリールを本気で撃墜する気あったのだろうか?
ついでにもし撃墜できたとして、それがジブリールだったとどう論証するつもりだったんだろう。逆に墓穴なのではなかろうか。

どうでもいいがタリアに意見求めるなよ議長(TT。政治判断と軍は近代国家では別物のはずである。

前回ラクスを討ちもらしたことといい、シンの天敵はジャスティスガンダムなのではなかろうか。

戦闘が終わり放心して脱落するアスラン。サーベルの電源を切っているあたりさすがというべきか。てかアスランの服を脱がすキラのシーンって萌える女多いんだろうな^^;

アークエンジェル掃討戦、ヘブンズベース戦に次いでまたしても潜水部隊が原因の失態。陸に上がったところをドムにやられてるし。ここまでくるともう潜水部隊への悪意しか感じられないのは気のせいだろうか。

それにしてもバンク多すぎ。


マリューに対して仲間入りを志願するネオ。「俺の目や耳や何かがあんたを覚えている」の“何か”にまずナニを想像したのは俺だけではあるまい。


演説って電波ジャックよりも公開討論に持ち込んだほうがおたがいにメリットがあると思うのは気のせいだろうか?
ラクスにしてもカガリにしてもまず自分の正当性なり経緯の説明が大事だと思うのだが全くしていない。二人とも画面に出てきた姿では偽者と思われてもおかしくないはずなのだ。

とくにラクス。ここ数年メディアに露出してる姿とあの忍者コスプレ明らかに違う。前作の終盤の演説は映像ではなく音声なので、戦場でのラクスの姿を見ている人はごく少数のはず。胸の大きさの違いもわからない人々がアレをラクスと認識できるのだろうか?

そういえばシン、画面にカガリを見ても怒っていない。主張にしてもこれまでの彼女の行動にしてもシンの逆鱗に触れてしかるべきなのに不思議なことである。

どうでもいいがラクスの『もう迷いはありません』との発言。「目立つこと」に迷いがないのか、代役をさせられた不幸な少女に引導を渡すことに迷いがないのか。
はたまた胸がないことがばれるのがこわかったのか。微妙なところである。

そして事態はカガリ・ラクス対議長・ミーアの外交戦へ。
ていうか議長。ラクスとオーブがつるんでいたことでなぜ驚く?というよりあの姿の怪しい女性をラクスと一目で見抜いただけでもこの人は只者ではない。


<けつろん
全てはラクスに始まり、そして、ラクスに終わる。





注)
ラクスとマリュー、アスランのやり取りは以下の通り。

『艦長。どうか彼の思う通りに』
ラクスの立場から言っても、2年間共同生活していたことを考えても、マリューを「艦長」とわざわざ他人行儀に呼ぶのはちょっとおかしい。含むところをどうしても考えてしまう。




また今回、アスランは病身を押して出撃、鬼神のような活躍を見せている。気になったので前回を振り返ってみる。


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ラクス登場。(メイリンを視認。あ゛ーん?私のいない間にゴクツブシ連れ込みやがって。)

『何であれ、選ぶのはあなたですわ。』
(たとえ押し付けられたものであろうが決めた責任はお前にあるんだよ!当たり前。)

憂いを秘めて見つめるラクス。(で、お前ら何日いたの?お前らにいくらかかったかわかってる?)

『君も、俺はただ戦士でしかないと、そういいたいのか?』に対し、不思議そうにじっと見つめるラクス。(何をいまさらうたってるんだこのバカ?)

にっこり笑って『それを決めるのも、あなたですわ』(そんくらい自分で決めろよボケ)

『こわいのは閉ざされてしまうこと。こうなのだ、ここまでだと終えてしまうこと。傷ついた今のあなたにこれは残酷でしょうね。でもキラは』
(怪我だとか言うのは理由になんねーんだよ。機体用意してやったんだから死ぬ気で戦いやがれ。その体でも私が乗るよりマシに使うことくらい当然できるよな?


『力はただ力です。そしてあなたは、確かにただ戦士なのかもしれませんが、アスランでしょう?』
(お前兵器になに夢見てるんだ?フリーダムはともかくお前用のにそんなもんついてるわけねーだろうが。お前戦うしか能がないんだから自分のポジションくらいわきまえろよ)

『きっと、そういうことなのです』(“きっと”じゃなくて“絶対”なのはいわなくてもわかってるよな?)

のみならず、アスランが悩んでいる間中そばにいたばかりか乗り込むまで笑顔でそばを動かないラクス。
(お前の行動ちゃんと見てるからな。変な気起こしたらこの赤毛女がどうなるかわかるよね?)


・・・・なら、乗るしかないじゃないか。マジで他に選択肢がないように思えてならない。あの活躍も命がかかっていると思えば納得である。アスラン、文字通り捨て身だったのだ。

してみるとあのパイロットスーツも爆弾でも仕掛けられていないか非常に気になるところである。というかアスランのパイロットスーツって特注の専用服っぽいのに何でザフトデザインなんだろう?







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