ここ一週間『最終回記念特集』だけを書いていた。ガンダムに携わってきた人生の総決算みたいなものだ。文字通りガンダムSEEDのことだけを考えてただ時間が流れていたと思う。そんなときに『続編があるよ』という情報が流れた。

・・・・・頼むから勘弁してください福田さん。



ガンダムSEEDデスティニー50話 最後の力


<あらすじ>
最終決戦。ラクス艦隊の猛攻によりザフト軍全面敗北。議長が死んで終戦?

 

<みどころ>
非常に微妙な最終回。私は相当限定条件付ながら肯定派であるため、読まれる方は若干の注意である。(友人などはけちょんけちょんにしていた)

・肯定してもいいかなという点
負けるサイド(従来の主人公側)の各人に救いがあったこと。
言ってほしいセリフのいくつかを言ってくれていること。

・批判されるべき点
重要なシーンの登場が遅きに失したこと。
登場人物の帰結に物語の風呂敷を広げる必然性がまったくなかったこと。
結局物語がどうなったのかさっぱりわからないこと。

あくまで、まったく期待していなかったものが多少良かったらそりゃうれしい、というレベルであるが。


冒頭。メサイヤ前面・防衛ライン上でのシンレイVSアスキラの熱い戦い。使い回しばかりだがそれなりに燃える。ちょうどいいところで主題歌&エターナルの挿入。ピンクが本気で邪魔に見える一瞬。

エターナル、メサイヤに突撃。フォローしようとするアスラン。敵が勝手に分散してくれたのにこっちも一緒に分散するシンレイ。シンVSアスラン、レイVSキラ。どっちも一騎打ちで負けて撃破される。してみると前回の議長の分散戦術、二人には“見習うべきもの”として映った模様。高校生もまだまだ子供、意味を考えずにカッコだけ真似するから大人は言動に気をつけましょうという好例である。その議長にしてもラクス軍対策にミネルバ&シンレイしか戦力として念頭になかったらしい。確かにジュール隊は裏切っているわけだが・・・

キラVSレイ。クルーゼの気配を感じ、レイの恨みを受けつつ、『命は一つなんだ!』と喝破するキラ。なるほど、これは確かにアスランじゃ説得力のないセリフである。言ってたけど。とにかく思わず隙ができ、無力化されるレイ。

どうでもいいが戦闘というものは必ず怒号や喚声に象徴される。格闘技や剣道でも人は叫ぶ。自分を鼓舞するためであり、敵を圧倒するという生物的なものもある。つまり叫んでりゃなんでもいいのではないか。ましてや今作のキラは戦闘時には寡黙の人であり、レイもまた『敵の叫び』を聞いていた記憶がない。いきなり意味音を絶叫されたレイはさぞかし面食らったことであろう。極端な話、キラが『プリン・ア・ラ・モード!!!!』と語りかけていても同じ効果をあげていたのではないか。

一方、アスランVSシン。前座でルナが『メイリンを(たらしこみやがって)・・・!!』とアスランに立ちふさがるが前座の悲しさ、取り合ってすらもらえず早々と無力化される。というかおそらくアスランは意味を理解していない。
ルナを助けに攻めかかるシン。今度はルナのために種割れしている。思えば、彼が他人のために種割れしたのは初めてではなかろうか。数合交えたあとでアスランに『バカヤロウ!過去にこだわるな!未来を見ろ!!』の旨を言われて動揺、アスランに打ちかかったところにルナが割ってはいる。その隙をつかれ、シンもまた無力化される。

このときのルナについて友人のいわく『メイリンのことはどうしたんだよ!』とのこと。でも元カレよりも、生存が確認された妹よりも、今カレに乱暴なことをしてほしくないとするルナというのはそれなりに納得もできる気がする。間違ってもアスランかばったんじゃないよねソウダヨネ?

ちなみにこのときの『バカヤロウ!』こそ、誰か先輩がシンにかけるべき言葉だったのではないか。これは見ていて溜飲が下がった。
それにしてもアスラン、かつての同胞を気持ちいいほどバカスカ撃墜している。ミネルバのことも嬉々として無力化してたし。ここまで殺しまくっておいて『未来を見ろ!』発言。恥知らずを通り越してむしろすがすがしい。テロリストの優秀な戦士とはこういったものであろう。いやあえて呼ばせてもらおう、好漢であると。(こうかん:男っぷりのあるナイスガイのこと。水滸伝ハマってるんです)なるほど血にまみれたような赤がお似合いではないか。女性にも見える優男なのにワイルドさが兼ね備えられている。田中理恵が股座をぬらすというのもわかろうもの。

してみると議長、殺人狂におよそそぐわない役目を与えようとしていたことになる。そら離反されるわ。せめて『君はその機体で悪だと思ったヤツを片っ端からぶちのめしていけばいい』とでも言ってやれば違ったのだろうが。


勝ち残ったジャスティスはそのままアークエンジェルを援護。ミネルバも沈黙。
一方、ジェネシスで味方ごと戦場を撃つ議長。それを見て総員退艦を命じ、ひとりメサイヤに向かうタリア。
議長はそのまま勝敗を決しようとオーブに向けた?レクイエムを発射しようとするが、ネオとアスランによって阻止され、その爆発でメサイヤ自身が大破、月に落下していく。

どうでもいいが『何でこんなものを守る!?』というネオに『わかるまい、戦争を遊びにしていたお前には。』と言いたくなった俺がいる。(脇から女はべらせて見ているだけで、女をもてあそんで!!)

ところでラクス、大勢が決した肝心なときに降服勧告を行っていない。言葉だけで勝てる絶大なチャンスなのに。やっぱりこの期に及んで議長に従うような人間たちには用はないようである。


メサイヤ内で議長と対峙するキラ。私を殺したらこの世界はどうなる?と議長。運命に立ち向かう覚悟はある、とキラ。このときの問答、最終回特別企画を書いてきた身としては妙に納得であった。以下、私史観で二人の発言を意訳してみる。(抽象的に対話してくれてるから可能なのだ)
本編を少しでも楽しく感じていただける足しになれば幸いである。

議長「ジョージ・グレン以後のコーディネーターとナチュラル混在の問題は解決していない。世界政府たる連合の支配力も地に落ちている。私を殺したら、誰が代わって世界政治を行う?」

キラ「だからといって、あなたの提示するデスティニー・プランには無理がある。運命は自力で選び取るものだ。」

議長「自由意志に任せれば争いを起こすのが人間だぞ?それに、君たちは一度、世界に臨む役割を放棄しているではないか。(2年も引きこもりやがって誰が尻拭いしたと思ってるんだバカヤロー)」
キラ「もう逃げない。アンタに代わって俺が立ち向かう。覚悟はできた。」

前作でキラは『僕たちはどうしてこんなところまで来てしまったんだろう?』と言っている。もちろんタチの悪い女にたて続けにだまされたからなのだが、当事者意識がなかったのは確かである。ところが今回の宣言の場合、キラの決意表明ととることもできる。キラはもともと人類を導くべき存在として作られている。つまりデスティニーは『キラ・ヤマトが自分の立場から逃げることをやめて世界の指導者としての覚悟を定めるまでの物語』である、とも言えるのだ。


キラの後にレイが忍び寄ったのを見て取った議長は勝利を確信する。そこにタリアも割って入り、緊張が一気に高まったところで、レイが議長を撃つ。議長の下に駆け寄ったタリアはキラを退出させ、レイを招きよせる。レイに『よくがんばったわね。』とタリア。『おかあさん』と泣きじゃくるレイ。議長もまた、思い人のひざで安らかに眠る。この3人のシーンは泣けた。てかこれだけやりたいなら世界戦争なんぞする必要は全くないのだが、とりあえず泣けた。どうしようもなく人迷惑な二人の駄々っ子はタリアの愛によって救われたのである。てかもっと早くやれよ。ていうか存在を肯定されてこれから変われるチャンスがあると思った矢先に死なされるレイ。いかがなものか。

一方、死の淵をさまようシンの前にはステラが現れる。妄想世界のはずなのに「こっちにきちゃいけないよ」と事実を的確に認識しているシン。いつも会えるよという意味のことを言うステラ。どうでもいいがまともにしゃべれてる時点でこのステラはニセモノである。
そのシンが目覚めたのはルナマリアの膝の上。抱きつき泣きじゃくるシン。気にせずやさしく抱きしめるルナ。ここでも女の膝に救われている。バックで月面に崩壊するメサイヤも、遠くから眺めればただただ幻想的な光景にすぎない。たしかに、若い二人のこれからには何人死のうが関係ないのかもしれない。そんなことよりもはるかに大事なのは男が寝言で別の女の名前を言っていたことである。これからことあるごとに責められるに違いない。

かくして戦いは終わった。多くの謎を解明することなく、揃い踏みする勝者たちのガンダムのシーンが流れて、終わり。今までそうであったように、歴史は勝者に都合よく、部分修正されてゆくのであろう。

世界は今、新たな局面を迎えたのである。


<けつろん>
かならず、さいごにあいがかつ。



<放映直後の総括>
かくして、長い長い一年が終わった。
ネオとシン、ネオとレイ、キラとシンの対決など、必要と思われたものはいくらでもある。解決されるべき謎も放置のまま。肝心の物語の今後すらわからない。今回の話にしても使い回しが多く、一方でシン・レイ・ルナのここにいたるまでの絡みやアスキラとの人間ドラマなど、『これがもっとあれば・・・・』と惜しまれるものも多々ある。
シン・アスカという主人公も斬新な試みであった。彼は本来敵側のライバルに相当する役どころである。最初から軍人である少年が主役のガンダムと言う点も、いくらでも生かせたであろう設定である。が、これも失敗している。

やはり、作品そのものとしては最悪だったのではないか?

原因は色々考えられる。戦闘しないし話進まないし人間ドラマも進まない。監督があまりにも不勉強なのに傲慢。なにより作り手が自分で物語を作りきるという意欲に乏しい。一番割を食ったのはガンダムファンでもSEEDファンでもなく、デスティニーを好きだった人間ではなかったか?

今になって一年前を振り返ると、デスティニーという作品が何を貶めてきたかがわかる。去年の今頃は新シリーズに期待していて、フリーダムという機体も大好きだった自分がいた。父親を鮮やかに消して見せたラクスという天才にもほれ込んでいた。もちろん、このすべてはデスティニーでスケールダウン、あるいは破棄されていく。

が、私的には今回のエンドは納得だった。一つは前作でラクスたちが放棄した『世界の未来に指導者として責任を持つ』ことについて、キラが今回は対応を確約している。アスランもまた、自分の意志で怒りを表明できる(NOが言える?)人間になっている。彼らはいずれも指導的立場にたつことを望まれるであろう人間であるから、こうした進歩はこの世界の人間たちにとっては歓迎すべきであろう。てかこれでダメなら今度こそタリアの子にでも討たれてしまえ。俺が許す。そして、シンにしても一応、違った形で今後の人生に向き合うことができるはずである。

まあ全部含めても26話ですみそうではあるが。最近のインタビューで福田監督は『やりたいことは全部できた』と言ったという。今回の話で何が述べられて、何が述べられていなかったのか?そのあたりが福田監督という作り手の作品観になるのではないか。私は、それが1年物のガンダムとは相性が悪いものだ、と考えている。

ただ一方で『ものを考えさせる』という点では、私に関しては確かにいい転機になった。一年間つねにレビューで書くことだけを楽しみに見ていた。したがって本編そのものの印象は非常に薄い(書くそばから忘れていってる)。ことにこの一週間、最終回特集を見ていただいた方にはお分かりと思うが、SEEDのことだけただひたすらに考えていた。私にとってはZから始まったガンダムとのかかわりの総決算だからである。

無意味なものを考え続けた自分は馬鹿だと思う。あと少し『俺以上に考えた馬鹿はいないよ』と言うところまでつきぬけて、終わりにしたいと思う。
現在の予定では、気が向いたら最終回を見返してレビューを手直ししてみる。最終回特集はあと2項目を予定、ミーアもの(もう需要ないかな?)までを書き上げて、このサイトでのSEEDデスティニーに関する活動をひとまず終わりにしたいと思う。できれば火曜日までに終わらせたいところ。

最後に、ここまでお付き合いくださった皆様に、この場を借りて深く御礼申し上げる。





<見返して気付いたこと>
2日たって見返してみた。

ええと、とりあえずフォローがかなり難しい。やっぱり知らない方がいいことはあるものである。

とりあえず今回の仮説。
“クルーゼ”による二度目の刺激によってキラがスーパーコーディネーターとして本当の意味で覚醒したのではないか?

そのつもりで見ると種割れしたラクスがキラを感知しているのは同じSEEDを持つ同士なだけに“王の覚醒”を感じた、ということになる。
だからこそ議長に相対したのがラクスではなくキラであり、また、レイが議長を撃ったのもレイたちが『キラにかしずく者』として作られていたから、『遺伝子レベルで刷り込まれていたもの>>後天的な人間関係』という結果となった、という仮説であった。

ところが本編、「僕もみんなと同じ、ただの人間だ」とのたまうキラ。ダメじゃんorz・・・・覚醒しつつあるが錯乱中とか言うめちゃめちゃ強引な解釈でもしない限り整合性が取れないようである。


ちなみにキラがレイに対して言った「君は彼じゃない!」との言葉、半分ハッタリでもあるのではないか。
『マジかよ今こいつ“クルーゼ”っていったよな?あいつだけはマジ勘弁なんだけど^^;やなんだよなあいつ強いし。これでまたフリーダム壊したらラクスがまたうるさいし。んでもクルーゼってうざそうだからちゃんと殺したはずなのに。あーでもムゥさんのことがあるから生き返ったってオチも余裕でありか。あーまてよ?ムゥさんも記憶戻した当初錯乱してたよな。えええいハッタリでもかましてやるかっ』

結果はいうまでもなく。口八丁のキラの作戦勝ちと言うべきか。


一方のシン対アスラン。このときのシン、アスランの行動全般にではなく、ルナに手を上げたという行為にのみ怒っているのではないか?
少なくとも前半部の怒りはすべてルナマリア絡み。「ルナーッ!」と叫びながら駆けつけ、「この裏切り者ォー!!!!・・・・よくもルナを。」と続く。
シンにしてみれば、アスランがかつての同胞をばしばしぶち殺しているところ(※)しか知らないわけで、アスランがルナを殺そうとしているように見えてもおかしくない。
「アンタってひとはぁ!(仲間、それも女まで殺すのか!?)」でも、先輩への敬慕を多少なりとも持っていた少年の心情としては理解できる。

後半、シンはアスランに対し有効打がないことを悔しがり、心には『戦うべきときには戦わないと』と『何も守れない』と言うセリフが去来している。守るべき彼女が殺されそうな今こそ、戦うときではないか?勝てない自分にいらつく少年がこの回想で自分を奮い立たせる、というのは流れとして納得がいく。

一方、アスランの説得が効いているのはむしろルナマリアである。過去ではなく未来。そしてアスランには殺意がない。味方は敗色濃厚。自分のために切れてくれたのはうれしかったけどもう十分。ルナがかばったのはアスランではなく、シンの良心だったのではないか?

とはいえ、ここでもorz問題はきちんと出現する。後半部、シンの心情と画像が食い違うのだ。これも俺の錯乱?



さて、各所で取り沙汰されるタリアの行動であるが、彼女がザフトの軍人、それも高官であることを考えれば納得。
新鋭艦の艦長を任されたほどの彼女であれば2年前も軍人で尉官クラスの仕事はしていたはずである。したがってアスランの親父が何をしたかも知っている。議長が錯乱して味方まで撃ち始めたときに『いかなくちゃ』と行動を開始しており、最後にはレイを呼び寄せている。この行動、彼女の個人的な背景のほかに“独裁者たちの最後のあがき”を防ぐという目的もあったのではないか?

してみると、キラとのやりとりも真意は『このバカたちがちゃんとくたばるまで私がしっかり監視しているからアンタは安心して帰っていいわよ。』ということになる。それに『ああ言っておけば残党追及が厳しくなっても子供は粛清されないだろう』という目論見もあるのではないか。しかも今回、看取られる側はそっち側の目的には一切気付かず安らかに死んでいっている。いい気なものである。まぁタリアも命かけてるからいいか。母は強し。

やっぱり、世界を救ったのはタリアの愛だったのである。

どうでもいいが、今回の戦いでミネルバはかなり被弾している。そして映像が出てこないヴィーノたち。これまでの扱いを考えれば人知れず死んでしまっている、と考えることも可能である。


<けつろん>
あいは、こうへいではない。

※殺人狂っぷりを指摘して以来、私の目にはアスランがこのように映っている。一般に知られている姿とはかなり異なるので注意である。


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