総集編のようなものだと思っていたら実際は50話のほぼリメイク。
サブタイトルを見て納得。本放送での最終話は
なかったことにしてこっちの話を選んで記憶すればイイノネ



ガンダムSEEDデスティニー
年末スペシャル 選ばれた未来(A面)


<あらすじ>
最終決戦(50話)の焼き直し。ひたすら戦って戦って戦いまくってラクスたちが勝つ。

 

<みどころ>
焼き直しであるため、目新しい展開はほとんどない。増強されたプラスαの部分をどう捉えるかで大きく評価が分かれるのではないか。具体的にはメサイア攻防の乱戦シーンである。戦闘。とにかく戦闘。ひたすら戦闘。本編55分のうち90%以上を戦闘に費やした観がある。

その今回であるが、放映直後(3時)に電話してきた友人によれば『ほめるべき点がない』とのこと。一方で私としてはそれなりに納得がいっている。本放送終了より3ヶ月のブランクもあるため、注意点を以下にまとめてみた。急がれる方はここをクリックして飛ばしていただければ幸いである。

<注意点>

・肯定してもいい点
本放送時に舌足らずだった部分がボリューム増強され、きっちり(?)補完されていること。
最初からそうしろよ。
私の仮説にほぼ従う形で展開が推移してくれたこと。
とはいえ、月曜前の深夜2時にニヤニヤしながらアニメを見ている若者はかなりいけていない。

・微妙な点
通常版のあらすじをはじめ、相当量の予備知識が前提とされること。
1時間のほとんどが戦闘シーンであり冗長に感じること。(楽しめる人の絶対数が少ないのではないか?)
社会人には嫌がらせとしか思えない時間帯に放映しやがること。


・前提としていた私の解釈(詳細はこちら
1:前作から暗殺未遂までラクスとデュランダル議長の間には盟約(共闘関係)があった。
2:1は『双方のナワバリ(ラクス=オーブ、議長=プラント)に不干渉』といった類のものと思われる。
3:議長の目的は人種問題(コーディネーター問題)の解決である。
※ラクスたちが勝手に隠遁してしまったため、彼のみがこの問題に対処している。
4:均衡が崩れたのは議長の中でラクスの再出馬に対する不安が高まったためと思われる。
5:議長による違約(オーブ攻撃)をきっかけに、ラクス・デュランダル両軍閥が全面衝突しているのが現状。
6:つまり、現在の戦争状況は国家の対立というよりむしろ私闘に近いものである。
7:この戦いのさなかにキラ・ヤマトが本来の目的(世界の指導者としての役割)で覚醒。
8:議長がレイに討たれたのはレイが本来『キラにかしずく立場』として作られていたため。(先天的関係>>後天的関係)

つまり、私の頭の中では今回の年末スペシャルは
『本拠地を直接狙われ、ザフト軍にラクス軍が引きずられる形で始まった決戦』という構図になっている。




<注意書きここまで>




12月26日、1時50分。カッコイイ音楽にのってダイジェストが流れはじめる。かなりいい感じ。5分程の中に50話分のベストだけをぶち込んでいるのだから当然といえば当然なのだが、やっぱり種デスなだけにこんな程度のことでも安心してしまう俺がいる。

OPはVestige。あわせて新作カットもかなり追加されている。これまた当然といえば当然なのだが主役はキラ&フリーダムのようである。
そのキラが手にするのは・・・・・











おい。




この番組は一部地域ではクリスマスイブの深夜、つまりサンタさんがプレゼントを届けてくれる時間に放映されている。映像を見る限りではリボンがかかっているのはラクスだけなので、
タイミングをよく心得ているというべきか。
とはいうものの、本編を最後まで見てしまうと改めて
他人の女で抜けるかよという気分になる。微妙なところだ。てかこのプレゼントってナマモノで美味なんだろうけどまちがいなく劇物だよな。



とはいえ、さすがは深夜枠になっただけのことはある。のっけからやられましたという感じ。ということで今回はスタッフのこだわりとも言うべき描写増強分に注目してみる。


1:直接対決の描写
最終話の焼き直しだからある意味これがメインになり、物語もシンレイVSアスキラからはじまる。目に付くのは彼らにルナとムウを加えた『主役たち』のアクションが濃厚になっている点。本編ではいまいち印象に残っていなかったドラグーンやビームシールドが豪勢に使われており、戦闘演出がぱっと見派手になっている。
この結果、レジェンドやジャスティスといった『強いはずなのにいまいち地味だった』機体にも脚光が当たり、勘違いお父さんが変な方向に頑張った結果こうした機体のおもちゃだけ無駄にいっぱいふえてしまったかわいそうなちびっ子などはビームチャンバラごっこができて大いにご満悦なのだろう。んなもんいればの話だが。

つまるところ『あの豪華な武装は何だったのか』といった問題点への対策というのは想像に難くないのだが、実際には戦っている相手も豪華になっているのでありがたみが全くない。決着が遅い分だけ逆にストレスがたまる


2:戦場全体の描写
あわせて、戦場全体の描写も増強されている。具体的には時間そのものが長くなり、やられ役同士のどつきあいが増え、バンクが減ったのだ。とはいえ、状況は大きな変化もないままただ散漫に垂れ流されており、1時間枠ということを考えれば苦痛ですらある。思えば種デスそのものがある種群像劇的な試みがあった。『物語というものはよく練られた状況や設定が配置されているだけでは面白くはならず、切り口(視点)がはっきりして初めて面白い』ということを端的に示した好例ではなかろうか。

もうひとつ、本放送時に舌足らずだった『危機的状況』の描写も相当強化されている。ようは『数で迫る議長ザフト軍の猛攻に苦戦する主人公達』、の構図である。一つ一つは拙いものの、それなりの量が繰り返されているため“このままではオーブがヤバイ”という感覚は伝わってくる。オーブが負けるとなぜいけないかということもラクス自身が言っている。『地球連合はどこにいった』とか『セリフ3つくらいで済むだろう』という至極真っ当な疑問はともかく、改善と言えるのではあるまいか。


3:心理描写
この表現が妥当かはさだかでない。が、いわゆる『舌戦』なり『問答』のシーンが相当増強されている。具体的に列記してみる。

キラVSレイ:
『命はひとつ』云々がより具体的になった。また、クルーゼに関して両者が何を思ったのかがより鮮明に描かれている。

シンVSアスラン:
会話がかみ合ってちゃんと問答をするようになった。結局アスランがゴリ押ししたイメージは拭えないが。また、黒いフリーダムのイメージが明らかに。

シン&ステラ:
ステラの妄想がシンが仮死状態の際に起こったもので、シンの吹っ切れるきっかけのひとつになったことが明確になった。どうでもいいがシンの『あした』はステラではなくルナと共にあるべきもののはずである。このカップル大丈夫なのかと余計な心配をしてしまう。
※番組のラストを見る限り、いまだにボロは出ていない模様。

議長の最期:
レイが「覚悟はある」のセリフに反応したことが明確に描かれている。これだけで私もご満悦である。


とりあえず作り手が何が言いたいのかがわからなかった部分が(方向性はともかく)相当クリアーになったのではないか。


4:キャラへのフォローアップ
3とも絡む。本放送時に気になった人が多かったであろう『あの時あの人はどうしていたの?』という疑問にかなりフォローがなされているのだ。
たとえばディアッカとイザークのシーンが増えている。ドム隊が結構頑張っている。タリア退艦時のアーサーの反応が描かれている。脱出艇でのミネルバクルーの様子が描かれている。ムゥも可能なときには不殺をしている様が描かれている。メサイヤでの議長の心理描写がある。なにより登場人物たちの『その後』が描かれている。


5:作画
今回、映える“画”が大幅に増えた気がする。たとえばMS同士の対決。シンにしてもレイにしても武器を駆使してかなり頑張っている。あるいは停戦信号によってルナとシンの見る光景がより幻想的になっている。とくにルナは全編を通じてかなり気合を入れて描かれている。本来的には彼女がヒロインであるから当然といえば当然なのだが。


6:改善『されなかった』もの
本放送時とは異なり、アスランもメサイヤ内に突入している。が、見事なまでに何もしていない。本来ならメサイヤにいる人間達に対してキラよりもはるかに因縁があるはずなのである。が、議長と問答をするでもなくタリアに礼をするでもない。本放送全編を通じてもうひとりの主役のはずなのに、である。また、後日はあっても連合についての言及はなく、ミーアやユウナにいたっては全く触れられていない。また、作画にしてもオーブ軍人やラクス、メイリンなどはかなり顔が違っているところがあり、手抜きの印象すら感じられる。


ざっと気がついた点をさらうとこんな感じになる。要するに本放送での『痒いところ』にかなり手が行き届いているのだ。
今回のスペシャルに対するスタッフの意気込みはかなりのものだったのではないか?少なくとも綿密な反省会が行われた形跡がある。また、その『改善』の方向性にも特徴がある。

ひとつが、あいまいさを避けメッセージを明言するようになったこと。
もうひとつが反・福田夫妻とでも言うべき一連の流れ。今回ミネルバ・ザフトサイド相当量掘り下げられているのに比して、ラクス側の描写の増加がほとんど増えていない。アスランのメサイヤ突入やキラの指揮など劇中での事実そのものが変更されているにもかかわらず、である。この結果、デスティニーでの新キャラの比重が相対的に相当上がったのではないか。


今回の年末スペシャル、私の目には福田夫妻の下で不当に貶められたスタッフの造反劇のように見えた。
スタッフたちがやりたかった作品をかなり気合を入れて作ったもの、という解釈はいかがだろうか。“本来の”種デスに相当肩入れをしている私はかなり溜飲が下がったのだが。


さすがに眠くなったので頭が回らなくなってきた。一旦筆をおかせていただく。

B面へ続く)



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